2016年10月10日月曜日

歴史は語り手次第・『マリー・アントワネットの嘘』著 : 惣領冬実 文 : 塚田 有那




「歴史は上書きされ続ける…」そう考えていたらこの本を見つけた。
《L'histoire continue sa mise à jour…》Je pensais que ça, j’ai trouvé ce livre.


『マリー・アントワネットの嘘』著 : 惣領冬実   文 :塚田有那 /講談社
http://bookclub.kodansha.co.jp/product?isbn=9784062202725


マリー・アントワネット!この展覧会が近く開催されるのを思い起こす。
Marie-Antoinette… ! Je me suis souvenu de cette exposition.

展覧会もヴェルサイユ宮殿監修ならば、この本に記録されたのも「ヴェルサイユ宮殿監修およびフルサポートによるマンガ誕生の経緯」。その冒頭第一章のタイトルが書名となっている。

事の発端は、フランスの出版社グレナ社社長の提案、
「ヴェルサイユ宮殿と一緒にマンガを作ることに興味を持ちそうな日本のマンガ家はいないか?」であったという。ヴェルサイユ宮殿が同地を舞台にしたマンガを描ける日本人の作家を探し、日仏の出版社で共同制作、二ヶ国同時出版しないかという打診。
この使命を請け負った日本人漫画家が『チェーザレ〜破壊の創造者〜』著者の惣領冬実さん。そしてこの斬新なトライアルを取材、スリリングな文でまとめたのが編集者、キュレーターの塚田有那さんである。

昨日見つけた本を、私は昨夜のうちに読んでしまった。
私自身もかつて、マリー・アントワネットのイメージを言葉で表現しなければならない仕事に直面したとき、事実らしき基本事項(音楽の都オーストラリア出身、女帝マリア・テレジアの娘、後世に愛されることになったそのファッション、香りの趣向……)のみで組み立てた経験がある。それは必ずしもそれまで広く世に知られたイメージではなかった。

うすうす感じていた疑問が、この本の第一章を読むことで幾らかクリアになった。今回、惣領さんは作品には徹底してわかり得る事実を反映させたかったようである。そのプロセスも勿論面白いが、同時に「マンガ」というメディアの底力を改めて感じさせられた。確かに私は学校で世界史を学ぶ前から物語やマンガを通じてマリー・アントワネットを知っていた。

さすがフランス人。自国をPRするのに長けている。改めてヴェルサイユの魅力を広く伝えるために日本のマンガとコラボレーションするのだから。歴史は語り手によって生まれ変わる。

…東京にて《SAWAROMA 》より。

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