2013年5月30日木曜日

ボルドー発・ヴィノテラピーとフルール ド ヴィーニュの香り

フランスで創刊80周年を迎えた美容雑誌"VOTRE BEAUTÉ"。
美容・化粧品情報に関して20年以上前から信頼している媒体です。

今日も興味深いニュースを発見。
クイズに答えて応募すると、"CAUDALIE"のオー・フレッシュ・フィーグ・ド・ヴィーニュが抽選で当たる、というコチラの記事

フィーグ。イチジクのこと。
この味も香りも大好きな私は、さぞ心地よい香りだろうと思い
この記事にリンクが貼られていたブランド"CAUDALIE"のWebサイトに飛び
ついついおもしろいのでフランス語のまま読みふけってしまいました。

ヴィーニュ、とはブドウのことですから
ボルドー発祥の事実はすぐに納得。

ブドウのポリフェノールによる抗酸化作用は知ってはいましたが
ただワインとして楽しむだけではもったいない
ということで
ブドウの茎から特別な成分を抽出して美容に生かすなんて
さすが農業国かつ美容先進国フランスです。

このブランド。
すでに日本でも知られているのでは?と
「ブドウ」「 美容 」「フランス」の3語で検索したらやはり。
ブランド名『コーダリー』がカタカナで見つかります。
ちゃんと日本語でも概要がわかるようになっていました。

しかし…
フランス人というのはすぐに
◯◯テラピー、と造語する傾向にありますね。
アロマテラピー、
タラソテラピー、
そして
ヴィノテラピー(コーダリー社により商標登録されているそうです)。

いずれも
イコール医療かといえば、
医師だけの領域にとどまらず
「より心地よく、より良い状態にする」美容やリラクセーションにも
つながっているようです。

コーダリーのトリートメントが受けられるスパも大人気だとか。
抜群のロケーションでしょう。

「テラピー」の意味がだんだん広範囲に拡がっています。
私は「問題解決」とか「知恵」なんていうふうにとらえたいと
思っているくらいです。

このブランドのスキンケア商品やフレグランスには
フルール ド ヴィーニュ(ブドウの花)と呼ばれる香りが使われているそうで
植物由来の成分のみから花のイメージを再現して調合されたのだとか。
フルール ド ヴィーニュもコーダリー社により商標登録されています。
(さすが!)
このちいさな白い花が咲くのは6~7月の一週間のみとのこと。

地域の特性が生かされた美容の好例として記憶に残りそうです。

18 visual works from 8 kinds of aroma ー 文化学園大学 けやき祭にて

文化学園大学 小平キャンパスにて毎年6月第1土曜に開催される
けやき祭 。今年は6月1日に開催されます。

昨年のようすは
18 visual works from 12 kinds of aromaー 文化学園大学 けやき祭にて

今年は、学内教科展示室において、「ファッションとアロマ」2012年度学生課題作品から8種類の香りのヴィジュアル作品が展示されます。

オレンジスイート
レモングラス
フランキンセンス
ラヴェンダー
ローズオットー
ジャスミン
イランイラン
サンダルウッド

違う背景をもつ人それぞれ
香りから感じ取るイメージが違うということが
目で改めて確認できます。

香りという抽象的なものを視覚表現する経験が
目に見えない時代の空気感を服に表現していこうとする
かれらのクリエイティビティに反映されていく…
そのような期待感を毎年実感しています。

ミントグリーンのボトルから

ミントグリーン。
色も香りも
イメージしただけで
クールダウンできる気がする。

ミントの葉は濃い緑。
ミントの香りからはみずみずしいクールなひんやり感とともにかすかな甘い余韻。

そんな色を見つけた。

Kenzo Madly Kenzo! Kiss ‘n Fly
05/26/13 11:17:19
By: Sanja Pekić


このマドリー。
最初はピンクのボトルでデビューしていた。香り自体も…なかなか身体の深い部分にグッと響く重低音のようで印象的だった。

今回の夏タイプの香りは
グレープフルーツのトップノートやミドルのフリージアから想像して。やや軽やかに清涼感が増しているのかもしれない。

とはいえ、個人的にはこの香りにはこの色が似合うような気がする。香りと色とのコントラストのドラマティックさは重要。

ミントの香料なんて
実際には使われていなくても
清涼感というイメージの風が
一瞬でも流れたら
その上でこそ
静かに秘められたパッションが魅力となって引き立つのだから。














2013年5月29日水曜日

大場秀章著『バラの誕生』を読む・2


大場秀章著『バラの誕生』を読む・1に続き
ひととおり読んだ上で改めて
特に印象に残った三つのことを記しておきたい。
*~*は私の印象の背景となった
本の記述をまとめたものである。


第一に
著者、大場氏の論じ方から
一貫して自然科学研究者としての謙虚で冷静な「事実」の見方を感じた。
わかっていることと、わかっていないことを明快に示すことをスタートラインとしなければ、それらの情報を材料としてどのように考えたかという筋道を示すことはできない。筋道がなければ第三者に納得のいく説明はできない。

第二に
美を発見する人間の感性が導く
影響力の重要性を感じた。
今回の場合はバラという生物種への影響力である。
数ある植物、花々の中で
人はバラに特別な価値を感じとり、特別な意味をもたせた。


そうした関心が遺された文献から推察できるのは
古代ギリシア・ローマ時代からであるという。
紀元前7世紀、エーゲ海のレスボス島に住んでいた
ギリシアの女流詩人サッフォーはバラを花の女王と呼び
バラについてのたくさんの詩をつくっているとのこと。
ローマ時代にはバラはさらに
高貴な花というイメージに加え
熱情、献身、秘密のシンボルと認められていったという。
そうした関心は、「より多く」いつでも欲しい時期に求められる要因となり
適切な場所での栽培へと導かれる。
さらに、「より強く」「より美しく」という願望がついには
19世紀の人口交配による初のハイブリッド・ティー・ローズに
始まるモダンローズ時代へと繋がる。


第三に
香料バラとして現在も世界的に名高く
栽培技術、香料製造技術ともに発展し続けてきた
ダマスクローズの歴史の古さである。


どうやら
古代ギリシア、紀元前の時代に植物学の祖と呼ばれた
テオフラストスの記述に登場する
「最も甘い香りのするバラ」
は大場氏によると
現在「ダマスクローズ」と呼ばれるバラであるらしい。


もし本当にそうであるとしたら。
少なくともこのバラは人との関わりにおいて
二千数百年の歴史を持っていることになる。
いまもその名で呼ばれ存在するのみならず
多くの新種の親でもある。

きっかけは
必要に迫られてのことだったかもしれない。
遠くからでもハッキリと伝わる強い芳香から
古代の人が特別な何かを感じていなければ
現代に生きる私はダマスクローズの香りには逢えなかったであろうし
これを原料とした香水にも出逢えなかっただろう。

さて
この本は一読した位では
到底全てを把握できるレヴェルの本ではないと思う。
私が触れた部分はほんの一部であり

バラの植物学
バラの園芸化の歴史
オールド・ガーデン・ローズ
モダーン・ガーデン・ローズ
バラの花譜
世界の野生バラ
………

豊富な内容が連なる。

まずは興味ある視点から一読すればよいと思った。
最初に私はバラの誕生の根拠と、香りについての関心度の歴史を追った。
これからもバラに想いを馳せるたびに開きたい本である。


2013年5月27日月曜日

大場秀章著『バラの誕生』を読む・1

バラの季節。

ブルガリアでは5月後半から6月初頭にかけて
香料バラとして世界的に名高いダマスクローズ収穫の最盛期を迎える。

ダマスクローズ。
紀元前の昔から存在したといわれ
ギリシャ・ローマ文化においても
その香りから高貴なイメージとして
広く愛されたオールドローズの一つである。

私もこの香りに心を動かされ
2009年以来
ブランド『パレチカ』の監修者としてバラについてそれまで以上に学び始めた。

ようやく入手できたこの本。
著者は大場秀章氏。
東京大学名誉教授、リンネ学会(ロンドン)フェロー、NPO栽培植物分類名称研究所理事長であり、植物分類学、自然史科学、植物文化史などを専門分野とされる理学博士。日本におけるシーボルト研究の第一人者ともいわれる。
1997年発刊のこの本はすでに絶版になっており、入手には時間を要した。




国際香りと文化の会 会報誌 VENUS VOL.22の特集テーマはバラであり、その中に私も論文を寄稿している。
巻頭の大場氏と中村祥二氏(国際香りと文化の会会長)との対談『バラの文化史』が花と人との関わりの歴史から、バラと人との関わりまで非常に興味深く記されていて、その中で紹介されていた上記の本を是非読んでみたいと思っていた。

さてこの本を今週はゆっくりと読みすすめていきたい。

本日はその1。
以下の…から…で挟まれた部分は
読みながら私が考え、つぶやいたメモである。

第一章には、『クノッソス宮殿の謎』と題して
4000年近く前に描かれた絵の中の花が
バラかどうかという考察が展開される。
これまでの植物学者や考古学者の見解を比較検討し
それがほんとうにバラなのかという問題提起から
バラという名前がつけられる前の
単なる花の一つとして認識されていた可能性を大場氏は示唆する。


数ある花の中から人に「バラ」と名付けられ
特別なイメージとともに必要とされるきっかけがなければ
原種を中心とするオールドローズだけでなく
人口交配技術によるハイブリッドなモダンローズとともに
これほど人によって増やされ、愛されてきた歴史はなかっただろう。

写真技術のない時代
ある生物の始まりは少なくともいつからなのかを探るには
描かれた絵や呼称の文字による記録
もしくは化石の存在が手がかりとなる。

実体が存在した時点を「誕生」とするか?
その実体が他と明らかに異なる特徴を持つものとして名付けられ
バラという呼称が文字記録に現れ始めた時点を「誕生」とするか?



第二章『ギリシアとバラ』では
バラの芳香を明らかに意識していたギリシア人のことが綴られる。
ギリシアで紀元前1200年ごろと推定される板書が発見され
そこにミケーネ人の文字で書かれた記述に
紀元前12世紀にはバラが芳香のある油作りに利用されていたことを示す
重要な証拠があると指摘し、大場氏は次のように続けている。
「ギリシア時代のバラ愛好の焦点は花のかたちや色彩よりも
はじめはバラのもつ芳香にあったことがわかる。」


気がつけば「バラ」と呼ばれるようになっていた花を
現代の私たちは愛でている。

名付けとともに
必要とされ大切にされる歴史の始まりのきっかけに
その芳香が重要な役割を果たしていたとするなら
私のダマスクローズの香りとの出逢いの感動も
改めて深く納得できると思った。


2013年5月26日日曜日

全方位へのびのびと・スイートマージョラムの優雅な曲線

窓辺の一輪挿しのスイートマージョラム。
かすかにスパイシーでほのかにフローラルな香りが
緑の小さな葉から漂い
なごみます。




一週間前に講義で使った後
肉料理にも使いましたが
葉の開き方が愛らしく丈夫そうな茎をもったものは
水に挿しておいたのです。




数日後。
有機的なその曲線はゆるやかに上へと伸び
水の中では根を張りはじめました。
なんと愛らしい。

学名 Origanum majorana
Origanum = refers to a plant that stretches and grows in all directions,
majorana = the large form
("375 ESSENTIAL OILS AND HYDROSOLS"/ JEANNE ROSE)

ラテン語の学名が示す意味はまさに上記英語そのもの、
「全方位に向けて伸び成長する」大きくなる植物。

まさに一輪挿しで
この植物の成長力を日々実感。

今年も
スイートマージョラム・スパイシーな葉と可憐な花で撮影できたような花に出逢えますように。


2013年5月24日金曜日

花はなぜ香るのか…静かなる巧みなコミュニケーションの魅力

先日、このような質問を受けました。
「柑橘果皮も、花も、植物は自分のために香りを発散させているのであって
ヒトのためにではない…ヒトは勝手にそれを利用しているんですよね」

「確かにある意味そうですね、」
と同意した後に私は
「ただ、薔薇の花などはヒトの手を借りなければこれほど多くの種類には増えなかったでしょうし、…ヒトは花にその香りや姿の魅力でもって多様化の手伝いをさせられているのかもしれないと花の研究者の方とお話したことがあります」
と続けました。

その花の研究者とは
2005年秋に開館した香りの図書館 での2006年6月に行われたセミナーで花の香りについてご講演された渡辺修治先生(当時 静岡大学創造科学技術大学院教授)と、半田高先生(当時 筑波大学生命環境科学研究科助教授)。

花がいかに
多種多様な香気成分を受粉の媒介となってくれる虫や鳥などの生態・行動に合せて発散するか。
その発散が効果的となるよう、空気との接触面積が大きくなるよう円錐形の花弁となっているか。
一方で、受粉の妨げになるようなカビや菌を寄せ付けない成分で防衛するか。
香気成分を作り出す指令は遺伝子が行うのだそうです。

先生方のお話から
子孫を残すために確実に受粉できるよう
その香り成分と外観によって巧みに周囲の生物を誘引したり、忌避したりする、
この花というものの静かなるコミュニケーション能力に深く感じ入ったことを思い起こしました。

翻ってヒトは
なぜ自らを香らせるのでしょうか。
改めて再考してみました。

異性を魅きつけるため、
と簡単に言われがちですが、
ただ魅きつければよいというものではないでしょう。

花は魅きつける相手を選びます。
自分の遺伝子情報が選ぶ確実な受粉の協力者のみを呼ぶのです。
「誰にでも愛される」
なんてことは考えないほうがいいかもしれません。

これは
生きものの遺伝子レヴェルの深いコミュニケーションに関わっています。
自分の遺伝子が結合したらより強い種が生まれる可能性へ
導かれているとしたら…
唯一無二の自分を表す、
自分にとって最も自然な笑顔でいられる
(花であれば咲いていられる)
香りをほのかに漂わせたいものです。

植物から得られる感動は日々続きます。
その姿からも香りからも
ヒトは心地よさとともに
生きものとしての知恵を感じられるはずです。

2013年5月22日水曜日

現代を軽やかに疾走する女性へ・メルセデス・ベンツ フォー ウィメン

初夏の陽射しが緑に揺れて
吹き抜ける風。

今を生きるひとの魅力も
一瞬の風とともに爽やかに香る季節。

来る6月5日に発売される
メルセデス・ベンツ初のレディースフレグランスを試しました。



パウダリーピンクの液体を肌にのせると
窓からそよぐ風を受けて
明るくフレッシュな透明感が
モダンな落着きを伴って香り始めます。

ほのかなベルガモットから始まるトップノートは
幸福感あふれるピーチとともに
自然な微笑みを引き出してくれました。

時間がたつとゆっくりと繊細なフローラルへ。
きらめく光のようなミモザの躍動感と
謎めいたヴァイオレットのコントラスト。

今という一期一会、
貴重な時間を生きる魅力的な女性さながらに。
数時間後、ふっと立ち上がった瞬間に香るのは
花々の陰影を包み込むような
パチュリやムスク、ヴァニラのハーモニー。
穏やかさの中にも確かに漂う余韻が心地よく
夕刻の風に合流。

「私は大丈夫。明日も走り続ける。私のスピードで。」



ボトルキャップにはメルセデス・ベンツの象徴。
メルセデス。
この響きにどこか「女神」をイメージするのは私だけでしょうか。
スペイン語のこの語源を調べると素敵な秘密がわかります。

ヴィジュアルには
真っ白のシャツをラフに着こなした長い髪の女性。
輝く眼差しが魅力的なそのひとの手にはこのボトル。

白のシャツを着こなす洗練された女性。
現代的で時代と共に歩んでいる女性をこの香りで描いた
調香師のミッシェル・アルメラック。
この二つのピースは
私にかつての愛用を思い起こさせます。
万年筆で「人生と美」を描くモンブランの香水
どことなく上品な余韻や
上質な革の匂いにも馴染みそうな魅力は
さすがミッシェル・アルメラック。

情報提供
ブルーベル・ジャパン株式会社
香水・化粧品事業本部
カフェ デ パルファム

2013年5月21日火曜日

"aroma"という言葉を再考する好機となった、MFU第44回ファッションマーケティング研究会

一つの言葉には
一対一対応でのみ意味が存在するかというと
答えは否。

その語源をたどると、本来の意味がわかります。
その面白さを実感できたのは
私が外国語学部で「言語」を学んだことからの
一つの収穫でもありました。

言語の語源を辿ることは
人の歴史を辿ることにも重なります。

しかし、言葉というものは
生きた人間が使うものですから
時代によって、場所によって、人によって
使われ方が異なるため
それぞれの文脈の中での意味は一つではなくなります。

ですから私は
大学での講義でも、講演会でお話するときも
テーマとされた言葉を、これから話す内容ではどのように定義するかを
最初にお伝えすることにしています。

このたび
コチラ でご紹介し、
受講者としての立場から記したコチラのレポートで記した研究会について
主催のMFU(日本メンズファッション協会)ブログ上
第44回ファッションマーケティング研究会を開催いたしました
テーマ「ファッション業界におけるアロマの活用と可能性~五感に訴える売り場づくりとアロマの歴史・文化を学ぶ~」
がアップされました。

「アロマの歴史」
このようにひとことで言うのは簡単ですが
この「アロマ」がここ20年ほどの日本で解釈されているような
リラクセーション目的のアロマテラピーを示す言葉なのか?
もしくは
アロマ本来の意味「芳香」を示すのか?
非常に曖昧です。

ですから私は最初に
"aroma"「アロマ」を
本来の意味「芳香・人にとってポジティブに用いられる香り」
として用いることをお伝えし、その定義上ようやく
「ファッションと同じくライフスタイルを豊かにするもの」と
お伝えできましたし
人と香料との紀元前からの歴史を語ることができました。
その歴史の中で生まれ、特に20世紀以降ファッションと密接に
結びついた香水(フレグランス)の話題にも触れることができたのです。

研究会で触れた歴史のトピックスでは
20世紀前半フランス人化学者によって
「アロマ+テラピー(芳香治療)」という造語が誕生するまでを
お伝えしました。
ここから「アロマ」という言葉の
使われ方が国によって違ってきます。

造語されてからまだ100年も経っていませんが
主にアロマテラピーがその言葉通り医療として発達したフランスでは
つい近年まではフランス語の辞書にすらこの言葉は載っていません
でしたし、一般の人が日常生活で使う概念ではなかったようです。
しかし、日本では薬事法や医師法などの関連から医療としては認められず
天然精油の安全な使用法のもとで心地よいリラクセーションのために
一般の人も日常生活で実践できる香り活用として定着したのです。

日本語の「アロマ」は必ずしも他の文化圏では
アロマテラピーのことを示しません。
ましてや「治療」とイコールではありません。
ワインや珈琲などの
心地よい味わい深い芳香を表現するときにも使われますし
「パルファン」も
日本では分類上最も香料濃度の高い香水を示しますが
フランスでは、例えばアイスクリームのフレーバーを示したり
純粋に芳香を示す言葉として広く使われているのです。

このような考え方をもっと大切にし
広くこれからの
人のライフスタイルを豊かにするキーワードの一つとして
さまざまな分野との相乗効果を創っていきたいと
改めて感じる機会となりました。

2013年5月19日日曜日

In the green, at Karuizawa

5月18日。

長野新幹線、安中榛名の次は軽井沢。

フレッシュなイエローグリーンの新緑に囲まれます。
空の色は私の大好きなブルー。
一期一会の空気を吸い込みます。



ホワイト&ネイビーブルーのアメリカンな建物。
パイの美味しいお店です。
この場所にて
香水評論家、平田幸子さんによる香りのセミナーが開催されました。



セミナーの前や後に休憩したテラスからの風景。
さわやかな空気が緑の間を抜けて
清々しく薫っていました。


このからりとしたクリアな空気に運ばれた
樹々や緑…植物の息吹きが
なんとも素晴らしい軽井沢。

地元でプロデュースされ、今春限定発売されたという
"Ex Karuizawa"と 銘打たれた正真正銘の香水にも出逢えました。

オーデコロン(香料5%)でも
オードトワレ(香料10%)でもない
香水(香料25%)の
奥深い余韻は、翌日になっても試香紙から優雅に漂います。

トップノートでは太陽の恵みが清々しい風の中で流れるように香り
ハートノートではガーデニア、ジャスミン、ローズ、
ミュゲ、ヘリオトロープなどの花々…
忘れ得ぬラストの余韻に導かれています。

"Ex Karuizawa"は限定数販売のため
詳細情報は公開されていませんが
香りの専門誌"PARFUM"165号には
お問い合せ先が記載されています。
TEL: 0267-42-3867
FAX: 0267-41-0750


2013年5月17日金曜日

"Downtown"(Calvin Klein)には、世界中の空気がブレンドされている

どんなフレグランスも
多かれ少なかれ
世界各地の香料素材がブレンドされているはず。

そう考えてみると
今回目に留まった新作に限ったことではないはずだけれど。

Calvin Klein Downtown
05/17/13 04:35:54
By: Sandra Raičević Petrović


なぜかこの新作のネーミング、
様々な人たちが行きかうダウンタウン…
可憐さの中にもシックな落ち着きを求める
若い女性の多くが好む甘いフローラルウッディという香調…
そして
イタリアンレモンとかチュニジアンネロリ、
ベースにつかわれたテキサスのシダー…
と、あえて地名が示された香料産地の明示から

「見えないけれど世界中の空気がブレンドされた香り」
その中に潜む甘美な旋律を想像してしまった。

ヴィジュアルがこのイメージに呼応。
モノクログレーに浮き上がる甘美な色。

夏は
人がますます自由にあちこちに移動する季節でもある。

移動先の空気と自分の香りがブレンドされて
新しい街の香りの一部になっていく。
その繰り返しが
どこでもない
その場所の自分だけの香りを
一期一会で生み出していく。
どんな人にとっても。

2013年5月16日木曜日

目を奪われた愛らしさは開花前の蕾…カルミア

昨夕。
約2kmの道のりを歩くことにしたら
こんなに愛らしい姿との出逢いがありました。




その幾何学的な形は
小さいながらも微妙な大きさと色合いが星のように拡がり
力強い緑の海の中で
さながら異空間を描いていました。

金平糖のような立体感に満ちた形の中で
やわらかなスカートの裾?
エレガントな日傘?をも想像させる開いた花もチラリ。

ほんとうに素敵。

その名は?と知りたくて
FACEBOOKで問いかけてみたところ
さっそくデザイナーの女性に教えていただきました。


発見された学者の方のお名前にちなんで
カルミア(ツツジ科)とのこと。

カルミア(『ヤサシイエンゲイ』より )

カルミア(『季節の花 300』より)

2013年5月14日火曜日

『アロマ空間デザイン』の事例から~MFU主催第44回ファッションマーケティング研究会

夏日到来。

眩しい陽射しを感じながら
MFU主催・第44回ファッションマーケティング研究会(5/14)にてお話致しますでご紹介の
第44回ファッションマーケティング研究会
「ファッション業界におけるアロマの活用と可能性
〜五感に訴える売り場づくりとアロマの歴史文化を学ぶ〜」
に参加してまいりました。

アットアロマ株式会社 代表取締役の片岡郷氏によるお話から興味深くうかがったアロマ空間デザイン事例について、感じたことをまとめておこうと思います。

まずは背景から…
片岡氏によると日本における香りマーケットが拡がり始めたのは1990年代。
ストレス社会という事態が意識されるようになり
ファッショナブルな人達に限らず、多くの方々からも
「癒し」、そして「癒しの香り」が求められてきた時期です。

ちょうど私も1989年の夏、晴海で開催された「香りの時代がやってくる…」
と銘打たれたセミナーを聴講していました。当時CI(コーポレート・アイデンティティ)デザインコンサルティング会社の企画室に所属していた私は、これからの時代のキーワードとなりそうな「香り」に着目した社長の意向からこのセミナーに出向いていたのでした。

高度経済成長時代のように「こうすれば(努力すれば)こうなる(報われる)」の将来設計が何となく描けていた時代とはうってかわり、先の見えない現実に直面、災害や痛ましい事件も続き、世の多くの人達の間に不安な気持ちが高まってきたのは特に20世紀末の10年だったと改めて振り返ります。
そのような中、人はあらためて五感を研ぎ澄ませ、より良くより快適に生きたいと願ったのではないでしょうか。
その手段の一つが、周囲の空間の香りをより快適に、ひいては多くの人達を魅きつける魅力的なものにするためにデザインされた空間アロマなのでしょう。

片岡氏から実際にアロマ空間デザインが導入された
1,全日空ラウンジ
2,SHIPS店舗内
3,LIZ LIZA 店舗内
それぞれの香りを試させていただきました。

1は、すうっと高い空に飛び立つような清々しさ。
高野槙の香りも活かされています。
2は、爽やかでありながらスパイシーでシックなイメージ。
メンズフロアに使用されたようでシトラス、ハーブ、スパイスが香ります。
3,は、はっきりとしたフローラル調。優しい甘さがふんわり。
さすが天然のローズの香料を使用されただけあってインパクトがありながらも
余韻は上品です。女子高生にも大人気。大きめのボトルがよく売れるのだとか。

場に合った香りは
場に合った人の服装、振る舞いのように
その場を居心地良く、素敵な空間にしてくれるものです。
その場の空気をつくるのも人次第。
その場で過ごした時間は貴重な記憶につながります。

最初は消臭目的だったという店舗の多くが
次の段階として、ブランドイメージ、ショップイメージとしての
空間アロマを求められるという事実をうかがい、
視覚とともに嗅覚もフルに活かして最大限の効用を求める…
生き物としての自然なヒトのあるべき姿を感じています。


2013年5月12日日曜日

『ヨーロピアンモード』〜『ローマの休日』〜『ROMA /Laura Biagiotti』


『ヨーロピアンモード2013』/文化学園服飾博物館で目に留まったドレス。
それは、かつてモノクロ映画でしか見たことがなかった
『ローマの休日』の冒頭で
アン王女(オードリー・ヘプバーン)が着用していたドレス。
白のドレスかと思っていたら
淡い穏やかなゴールド。
細かな刺繍模様。
デコルテにちりばめられた光沢が何であるかは
実物を見てのお楽しみ。

あのように優しく穏やかで気品のあるゴールド…
実は20年以上前に私が魅かれ愛用していたフレグランスの
香りのイメージにぴったりだった。

Roma Laura Biagiotti for women

ローマ。
香りのイメージの力を感じる。
1988年発売のこの香りを
私は1991年に日本で知り
そのクラシカルで柔らかな品格に魅かれた。

歴史が創り上げた空気を背景に
穏やかに浴びる陽の光を想像しながら…
その年の秋は仕事でイタリアに行くことになった。

…追想していたところ、
その懐かしい香りの新しいヴァージョンが
今春デビューするとのニュース。
Laura Biagiotti Essenza di Roma, Essenza di Roma Uomo

クラシカルなボトルのかたちはそのままで。

ちなみに
ローマという都市名は
「オオカミによって育てられたロムルスとレムスの双子の兄弟によって
建国されたという伝説から、ロムルスの名をとって付けられたと言われて
います。」
(『ローマ フィレンツェ ヴェネツィア イラストガイドブック 美しきイタリアの古都をめぐる旅』/アトリエビーナス著 /メイツ出版株式会社 より)

2013年5月6日月曜日

sawa-hirano.com リニューアルオープンいたしました


sawa-hirano.com(平野佐和 Webサイト)
本日5月6日に
リニューアルオープンいたしました。



2003年にWebサイトを開設して以来の
10年目のリニューアルとなりました。

2013年1月より
メンテナンス中となっておりましたが
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

立夏 〜 夏の新香水 ~ 石垣島の思い出

立夏。
今年は5月5日がその日だったそうです。
春分と夏至の中間点。

いよいよ夏がやってきます。
そんな中でこのニュース。
夏らしいフルーツの甘さが香るイッセイ ミヤケの新香水/fashion press

レディスの香りのミドルノートに「弾けるような」グァバが使われています。
パッケージに描かれているのはドラゴンフルーツ。

この愛すべき二つのフルーツから私は
9年前の夏に訪れた、オーシャンブルーきらめく石垣島を回想。
ホテルの支配人にいただいた、グァバのハーフカット。
あまりにも香りが素晴らしく、そのまま宿泊ルームのテーブルに。
翌朝素晴らしい目覚めが待っていました。
そして、月桃、アセロラ…魅力的な植物たちの中でも
ひときわ目を奪われたのはドラゴンフルーツ。
サボテン科さながらの勇ましい皮の中には
真っ赤な実、真っ白な実が黒い点々に彩られて。
爽やかで上品なお味でした。

これはぜひ6月に香りを試してみたいものです。
キゥイが描かれた男性用も
グレープフルーツにコリアンダー、
パイナップルにナツメグ…とあれば
ぜひ試してみたくなります。

調香師のアルベルト・モリヤス氏。
この方のつくられた香りの中には
「アクア ディ ジオ」(ジョルジオ・アルマーニ)があります。
これも、私はかつて南国への旅のお供にしていたということを
青い空、青い海とともに回想しています。



2013年5月5日日曜日

『横浜都市文化ラボ演劇ワークショップ』再演で再考した一期一会の感覚

3月、4月と
カレンダーなど
全くあてにならない気温の日が多く
あらためて我が皮膚感覚を大切にしたいと実感。

今日は昨日とは違う時間であるということを
もっと重視したい。
違う時間なのだから
なにひとつ
昨日と同じものは感じることが出来ない…
と、潔く我が感覚を解放して生きよう。

さて
急な陽気と「横浜都市文化ラボ」でご紹介した、大学生による、『腰巻お仙・忘却編』(唐十郎氏が状況劇場時代に創作した野外劇)が再演されるとの情報を得て、再演初日の4/30公演を鑑賞した。

3月に鑑賞したときと違うのは、
時だけではない。
感受する私自身の記憶と感覚。もはやあの時の私ではない。
舞台に集まった観客の顔ぶれ。人一人ひとりの放つオーラの力。
演じる人たちの記憶と感覚。もはやあの時の彼等ではない。

なので
当然私の感じたことも3/8と4/30とでは違うのだが
3/8にうすぼんやり感じて忘れられなかったインパクトが
4/30に決定的に浮き彫りになったという感触を得たものは
いくつか有った。

今回は観劇後
衝撃とともに気になって仕方がなくなってしまったことを
あれこれ連想のままに調べて考えて
発見や再考に浸る時間を持った。
こういうキッカケを与えてくれるものとの出逢いこそが
「芸術」との出逢いであると私は感じる。
同じような体験として
20年以上前、パリの某美術館で出逢ったある一枚の絵…
一目みて目が離せなくなり長い時間立ち尽くし
翌日ポンピドゥーセンターで
そのアーティストの資料を探してきたという記憶。

劇団唐ゼミのゼミログより
4/30,5/1に横浜国立大学にて再演された
『腰巻きお仙 忘却篇』について紹介された記事を貼ります。

横浜都市文化ラボ演劇ワークショップ、千秋楽!


横浜都市文化ラボ演劇ワークショップ再演、初日!


横浜都市文化ラボ演劇ワークショップ
『腰巻きお仙 忘却篇』


2013年5月4日土曜日

イチゴの香り〜 ロシアのお茶〜 "Miss Dior Cherie"

5月になると
子供の頃のイチゴ摘みを思い起こします。
小さなイチゴの甘酸っぱさ。
地面に這うように実っていて野菜のようでした。

そして小学生のころに
ジャムを作ろうとして煮詰めたときの
家中にふんわりとひろがった
あの素晴らしく幸せな甘いイチゴの香りは忘れられません。

バラ科の植物です。
苺・梅・桃・桜・杏・林檎・梨・アーモンド…
香りの素晴らしいものが多いです。

あの真っ赤な部分の中の小さな粒々一つひとつが果実。
そう考えるとビタミン含有量が多いこともうなづけます。

そういえば
日本でロシアンティーと呼ばれる紅茶には
イチゴジャムが入っていたような記憶があります。

アメリカのフレグランスサイト、"FRAGRANTICA"の中に
"Fragrances and Cultures "というカテゴリーがありますが
その中に、鮮やかなイチゴの写真とともに
"Wild Strawberry in Russia"という記事を見つけたので
ご紹介します。

Fragrances and Cultures
Wild Strawberry in Russia
06/03/11 12:11:14
By: Elena Knezhevich


ロシアの人が、ワイルドストロベリー(野イチゴ)を名付けたその由来が
これを摘むときにまるで地球におじぎをするかのような姿勢になることだった
というエピソードも面白く、この植物への愛情を感じます。

やはり。
彼らにとって野イチゴは親しみのある大切なもので
この記事の著者いわく、ほとんどの家庭でイチゴジャムがつくられ
冬のティータイムにそのジャムをつかっていたようなのでした。
ティーにイチゴジャムをいれたものをロシアンティと呼んだのも
あながち間違いではなかったようです。

さらに野イチゴの葉も煎じて利用されていたようです。
鉄分豊富で貧血に役立ったのだとか。
寒いロシアで、ビタミン豊富なものが得られにくい春先に
この野イチゴはどんなにか人々を助けてくれたことでしょう。

この記事の最後に
ワイルドストロベリーの香りが素敵に活かされ
洗練されたフレグランスとなっている例が紹介されています。
そのフレグランスの名前は
Miss Dior Cherie 。
(created by Christine Nagel in 2005)
淡いあわいストロベリーピンクのボトルです。





2013年5月2日木曜日

MFU主催・第44回ファッションマーケティング研究会(5/14)にてお話致します

来る5月14日。
一般社団法人日本メンズファッション協会 主催による
第44回ファッションマーケティング研究会
「ファッション業界におけるアロマの活用と可能性
〜五感に訴える売り場づくりとアロマの歴史文化を学ぶ〜」

におきまして、講師の一人として私がお話させていただきます。

MFU。
一般社団法人日本メンズファッション協会(THE MEN'S FASHION UNITY)
の略称です。半世紀の歴史をもつMFUの目的とはどのようなものでしょう。
協会の方にいただいた資料に記載されていましたので「」に記します。

「メンズを起点として、単にファッションにとどまらず、広くライフスタイルの多様性や生活文化の向上、健康な生活環境といった視点に立ち、人々に生きる喜びと感動とを提供しつづけることを目的としています。」

詳しくは、MFU公式Webサイトにてご確認いただけます。

私は、文化学園大学 現代文化学部 国際ファッション文化学科において
2005年より毎年「ファッションとアロマ」という講義を学生に提供して
まいりました。講義の中では
実際に天然香料から最新フレグランスまでを体感する機会を設け
「におい、香り」の文化と人との関わりの歴史を実感しながら
自らの感覚を研ぎ澄まし美的感受性を磨き、感覚表現力を高める
ための教育カリキュラムを企画実践しています。

このような立場から
短い時間ではありますが

・そもそも人にとって「におい・香り」とは何か
・ファッションブランドと香り
・香りの視覚化

について
お聴きいただけるお一人おひとりのご経験から
改めて再考・発見に繋がるようなお話にしたいと考えております。