2013年2月11日月曜日

真実を求める現代の知性6人の語り・『知の逆転』を読む

ある本を、ぜひとも読みたいと思ったら、そう芽生えたモチベーションそのものがかけがえのない出会いという宝物となる。そういう本は読む時ごとに新たな発見が必ずある。私は本当に読みたい本しか読んだことはない。

年末に発刊のニュースを知り、是非とも読もうと思って入手したのがちょうど一週間前。すでに第3刷目。既に多くの人に読まれていることだろう。私はこの一週間で二度は読んだ。そのせいか本の表紙が浮いてしまう。鮮明ではないが帯つきの表紙の写真を添える。




私がこの本を読もうと思った動機は二つ。
まずはインタビュアーでもある吉成真由美氏の『やわらかな脳のつくりかた』などの著書を過去に数冊愛読し、大切に保管していたという事実。吉成氏自身、アメリカの大学院の心理学部において脳科学を専攻した経歴をもつサイエンスライターである。

「…もしも、膨大な時間と労力をかけ、社会の枠組や時代の圧力にへつらうことなく、目をこらして物事の本質を見きわめようとし、基本となる考え方の踏み台を示してくれるような人がいるのであれば、ぜひその話を聞いてみたい。…4p〜5pより」
これは前書きで吉成氏が記した文章からの引用だが、私もこのモチベーションには共感する。すべて物事は、本質を考えることを忘れてはいけない。

もう一つは、6名のプロフィールを読み、各人の興味に忠実に深く学問を追求した彼らが、吉成氏が投げた問いにどのように答えたかに深く興味をおぼえたことだ。少なくとも過去50年を最前線で走り抜けてきた、生物学・生理学研究者、言語学者、脳神経科医、コンピュータ科学・認知科学者、数学者、分子生物学者。

知の逆転
ジャレド・ダイアモンド、ノーム・チョムスキー、オリバー・サックス、
マービン・ミンスキー、トム・レイトン、ジェームズ・ワトソン
吉成真由美[インタビュー・編]
NHK出版新書


本の概要については上記サイトにて確認できる。

さて、読後に私が感じたことを全て記そうとすれば相当長くなりそうであるし、またこれからも何度も読み返すつもりゆえ、今無理矢理まとめたいとは思わない。

読後第一印象の中で、とりわけ強く記憶に残ったことのうちの一つを綴る。

ノーム・チョムスキーはさすが言語学者である。言語の用い方そのものから鋭い指摘を行う。インタビュアーが「資本主義」という言葉を用いた直後のことだ。そして彼は、質問「特に若い人たちへの推薦図書は?」に対して正直に「わからない」と答え、「一番いいのは、自分で探して、驚くようなこと、予想もしなかったような本を発見するということでしょう」と語る。自分で発見する喜びをどう導くか。「香り」という科学でもあり文化でもあるテーマを大学の講義で学生に提供する私自身の課題を改めて振り返らされ、感慨深い。

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