2012年9月6日木曜日

「香水の名前を当てる」から蘇った記憶の中の香り

久しぶりに、「国際香りと文化の会」のサイトをチェックしたところ、会長で長年調香師としての実績をお持ちである中村祥二氏による興味深い連載「香り×つながる」(COMZINE by NTT コムウェア)を発見しました。

この連載第1回目の内容「香水の名前を当てる」を拝読し、改めて人肌が纏った香水の名前まで当てられる調香師の方の感覚精度に感銘を受けました。

とはいえ、かなりの量をつけていらした場合はよりわかりやすいのかもしれない、とも感じました。以前、中村氏の著書の中で、全く異なる香り方を感じた二人の女性が同じ香水をつけていたことを知り驚いたという記述があったからです。

その香水とは、あのシャネルNo.5でした。纏う人によって香り方が異なるというのも香水の魅力かもしれません。肌につけられたことによってその人特有の匂いと混じりあい、体温によって揮発し拡がる、その香り方の妙の美…

そんなことを考えていたら、私が25才の秋に体験したことをありありと思い起こしました。カットソーとスカート上下ともにボルドーカラー。紫と茶を基調にオレンジ、グリーンなど細かく複雑な色柄が織り込まれたペイズリーの大きめショールをまとめ髪の首元から肩、背中にかけて羽織っていました。
こんなことを憶えているのも、この姿で駅のホームを歩いていた私に

「あの、とても素敵な香りを感じるのですが…
なんていう香水をお使いでしょうか。
お差し支えなければ教えてください。」

と実に綺麗な女性の声がかけられたからです。振り返るとそのひとはマダムと呼ぶにふさわしい大人の美しい女性でした。

私はとっさに迷いました。足元素肌とショールのフリンジに香りをふきつけていましたが、その名前を告げてよいものかと…。でも結局はっきりと伝えました。

TEA ROSEという香水の名前を。

私に声をかけた女性も、調香師だったのかもしれません。


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