2011年12月11日日曜日

ジャン=クロード・エレナ 調香師日記(原書房)

ジャン=クロード・エレナ調香師日記。
原書房 近刊案内 にて紹介されている。

エルメスの専属調香師にして、"THE DIFFERENT COMPANY "(今年秋の新作はこちらOPENERS記事より )においてもラグジュアリーな香りを提供し続けている調香師による新たな著書。

昨年の今頃も白水社クセジュ文庫から「香水ー香りの秘密と調香師の技」が発刊され、すぐに入手した私は非常に興味深く読んだ。一度ならず何度も読み、特に印象的な文章はメモしていた。これからも繰り返し読むつもりだ。そんな本にはそうそう出逢えるものではない。以前もこのように情熱を傾けて読んだ本があったことを思い起こす。それは同じく調香師エドモン・ルドニッカによる著書「香りの創造」であった。後からわかったことであるが、エドモン・ルドニッカはジャン=クロード・エレナの尊敬する人物であったという。

「香水ー香りの秘密と調香師の技」の冒頭、「はじめに」の中でジャン=クロード・エレナが述べている次の文章は、私が真っ先にメモをとったものである。

…重要なのは、素材がいい匂いかどうかではない。素材はことばのようなものだからだ。素材ということばのおかげで、ひとつの物語を語ることができる。香水には、それ自身の構文と文法がある。私の鼻は、その構文と文法を検査する道具にすぎない。…

そのとおり、と感じた。色自体に綺麗かそうでないかがあるわけではないように、香りもそれ自体はひとつの情報にすぎない。組み合わせ方や、背景との関係性において様々な解釈をもたれるにすぎない。ずっとそう思ってきた。だから香料を鑑賞するときには個人的に良い香りと感じる感情的な印象はさておき、その香りが発する特徴、意味を理解することに専心してきた。

香りは言葉である。その考え方には共感する。

そうした意味において新刊の調香師日記を読むのが楽しみだ。香りで文学を紡ぐ調香師が、文章でどのような香りを感じさせてくれるのかと。



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