2011年11月27日日曜日

「香りを活かしたファッション教育」を再考できた日

11月26日。2005年から私が担当してきた大学講義での試みにエールをいただいたような気がした。これまで模索しながら実践してきた「香りを活かしたファッション教育」の可能性を改めて感じられたからである。

昨日午後。
明治大学創立130周年記念国際シンポジウム(主催:明治大学商学部) —「国際ビジネス教育の新展開をめざして」—ファッション・ビジネス教育の世界展開 を拝聴。ファッションデザイナーのコシノジュンコさん、シャネルジャパン社長のリシャール・コラスさんをはじめ、海外4カ国でファッション教育に携わる方々のお話を聴講。明治大学という130年の歴史と伝統をもつ総合大学の商学部が「ファッションビジネス教育の世界展開」を記念シンポジウムのテーマとして掲げ、次の100年に向けて「個を強め、世界をつなぐ人材育成」を具体的に実践しようとしている。

このシンポジウムは、明治大学国際日本学部特任教授、中野香織さんのブログでのお誘いにより事前予約していたもの。中野さんもさっそくこのシンポジウムについてのブログを写真とともに「神の創造物は丸く、人間が考え出したものは四角い」にて記されている。

ファッションデザイナーとして、コシノジュンコさんは自らの着想から考えた「対極の美のバランス」を説き、「ものごとを考えるセンス」の重要性を強調された。身近なものの中に謎や興味を発見できる感覚、そしてその着想から始まる思考を拡げられるか、ということは、形によって美(新たな意味を含む)を表現するデザイナーにとって不可欠な能力だ。

世界的なブランド、シャネルジャパン社長としてこのブランドの価値を広く伝える立場にあるリシャール・コラスさんは、創業者ココ・シャネルの哲学をブランドの歴史とともにプレゼンテーション。そのスピリットを活かし、「過去を生かしてより良い未来をつくるのだ」というゲーテの言葉を引用しながらも、「一貫性」・「継続性」・「統合性」をポリシーとし続けるブランドの姿勢を強調。

イギリス、フランス、中国、オーストラリア各国のファッションビジネス教育に携わる先生方は、現在各々の国に置かれている経済情勢、社会情勢から求められる人材育成へのアプローチとそのための国際的ネットワーク構築の必要性を説かれた。シンポジウム終演直前に壇上で一言ずつ、と言われて回答されたフランス、モダルト・インターナショナルスクール学院の校長、パトリス・ド・プラース氏がゆっくり重々しく伝えられた内容が印象的であった。会場の多くの明大付属高生や大学生に向けての言葉であろう。ーこれからは自国以外の異なる文化についても多く広く学び理解に努めようとすることが不可欠。ビジネスが国際的に展開する時代であるから。ー

さて、私の話。
2005年から文化学園大学(旧文化女子大学)現代文化学部国際ファッション文化学科において講義「ファッションとアロマ」を担当。当初この科目の企画依頼を受けたときには、ファッションを専攻する学生に香りの知識と教養を、という程度であったが、果たしてそれで良いのかと考えた。対象が現代文化学部、国際ファッション文化学科の3年生である。

紀元前の昔から人に大切にされてきた香料を嗅覚で体感しながら背景の文化を理解したり、最新のフレグランスのプレゼンテーションから各ブランドの歴史と哲学、ファッションにおける香りの重要性を知ること。これらを教養として身につけることももちろん貴重とは思う。こうした知識がベースとなって初めて有史以来の人の歴史の中の今、という視点を持てるであろうし、第三者に多角的にモノの価値を伝えられるからだ。しかしながら、かれらがそれまでに学んだ服飾造形表現技術が活かせるよう、そして個々の着想をスタートにどのような過程で具体的な表現に到達させるかを実践できる内容にしたいと思った。

その結果、できたひとつのかたちが、香りの視覚化表現を最終課題とすることである。…見えない香りというものを見えるように表現することは、自由であるが正解はない。着想を起点に深い思考が必要。模索し続け、ある段階を選択,統合して形にまとめるセンスが不可欠であることだけは確か。これを実感できる場をこれからも、未来ある学生に提供していきたいと思う。


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