2011年5月30日月曜日

香りのビジュアル表現展示・予告2


5月24日のブログでお伝えした内容の続報です。
2011,6,4 けやき祭が、文化学園大学のサイト上にアップされました。国際ファッション文化学科ファッションショーについては、昨年度の内容を写真でもご確認いただけます。

私の担当講義である「ファッションとアロマ」課題作品も、国際ファッション文化学科教科展示室の一角に展示されます。壁面には香りをビジュアル表現した平面作品が展示され、その手前に展示説明文と作品に対応する香りのテスターが設置されます。今回の展示内容は、9種の天然香料からイメージを得た視覚化作品18点。同じ香りでも学生の感性のフィルターによって全く異なる表現となることを確認できるのが興味深いところです。

ファッションを専攻し、服飾に関する技術と文化背景を学んできた3~4年生はこの講義の中で香りに深く触れ、培ってきた視覚表現に磨きをかけていきます。紀元前の昔から世界のあらゆる場所で産出され現代に至るまで活用されてきた香料から学生がインスパイアされていく過程は興味深く、丁寧に香料を鑑賞しアロマテラピーでの活用も実践する中で見えないものの影響力も実感するようです。この講義をきっかけに、フレグランスへの興味とともに積極的にファッション表現として取り入れてみようと思う学生が増えることも嬉しく思っています。



2011年5月28日土曜日

猫の嗅覚センサーは? 植物の香りをどう読むか?

嗅覚といえば優れたものとして犬が挙げられますが、猫はどうなのでしょうか。時々猫が色々なものに鼻を近づけてクンクンしている姿を目撃します。以前初めての訪問先で遠い高台にいたそのお宅の猫が私に近付き、顔や手や胸元などに鼻を近づけてクンクンした後で甘えてきたときは「私は安全とみなされたのかな?」と興味深く思ったものでした。

最近、猫と暮らす人で、自宅で積極的に香りを用いたりハーブや植物を育てるケースが多いとききます。同時に、人が心地よい程度の室内香(アロマテラピーで用いる精油を空間に焚くなど)は猫には無害かどうか、また香りのするハーブを猫が食べてしまっても大丈夫かという疑問の声もよく耳にするようになりました。

確かにこれは十分配慮に値することと思います。
人でさえ、強い香りの空間に長時間いたり、頻繁に過ごすことは辛そうですから人よりも嗅覚が鋭敏そうな動物にとってはもっと負担になるかもしれません。そして、猫と人では身体の構造が違うはずですから食べてよいもの、危険なものも違うはずです。

厳密には、猫の解剖生理学をわきまえた獣医師で、なおかつアロマテラピーで用いられる精油の猫への使用について見識をもち、猫が食べると危険な植物について知識がある専門家に尋ねたいところですが、とりあえず書物やインターネットでも基本的なことは調べられるようです。

まず、こんなサイトを見つけました。
「子猫のへや」。トップページに示された項目の多さに魅かれました。

その項目のひとつに
「猫の鼻・嗅覚」があります。やはり人よりも嗅覚が鋭敏のようですね。猫は主に「目の前の食べ物が食べられるかどうか」というチェックや、縄張り確認のために嗅覚を使っているのだとか。とすれば健康な猫であれば、ある程度口にする前に嗅覚センサーチェックが出来るのかもしれません。個々によって違う「鼻紋」というのも面白いですね。

とはいえ、人の住む空間は猫にとっての自然環境ではなく、彼らのセンサー機能が混乱させられることもないとは言えませんから、人のほうで予め危険なものを避けてあげる配慮も必要でしょう。「猫にとって危険な有毒植物」をよく読むと、ここで示されている情報は一通り目を通しておく価値があると感じました。

つくづく嗅覚はもっと使うべきものと改めて感じます。小さいころ、七宝焼きの教室で絵柄を作るのは楽しかったのに焼いているときのにおいで具合が悪くなり途中で帰ってしまったことはよく憶えています。今でも帰りの混雑した電車の中で危険を感じる位辛いにおいを感じて降りてしまうことがありましたが、それも自衛なのでしょう。




2011年5月27日金曜日

薔薇の切手 香りのイメージ展 (切手の博物館)

先週のブログで「薔薇の切手を眺めて…心はバラ園へ」を書きました。多くの方にお読み頂いたようで嬉しく思っています。そんな読者の方からご紹介いただいたのが、目白にある切手の博物館で開催中の展覧会「薔薇の切手 香りのイメージ展」

月曜日休館で6/30まで開催。これは是非行かなくてはと思います。
私が興味を持ったのは、薔薇の様々な絵柄を見られるというだけでなく、薔薇の香り付き切手が実際に発行されているという事実。近年オーストラリア、タイ、ドイツなどで発行されているというその切手の香り自体を鑑賞できるコーナーもあるというのです。さあどんな香りでしょうか。

切手というものをそれぞれの国がどうデザインしているのか、と同時に薔薇への愛着度も感じられそうな展示。お勧めです。

2011年5月24日火曜日

香りのビジュアル表現展示・予告1

今年も6月4日(土)に、文化学園大学(2011年4月、文化女子大学より大学名変更)小平キャンパスにおいて、学園祭「けやき祭」が開催されます。渋谷区代々木にある新都心キャンパスでは秋11月に文化祭が開催されますが、小平キャンパスでは毎年6月第一週目の土曜日に開催。

けやき祭では、現代文化学部のさまざまな教科展示とともに国際ファッション文化学科によるファッションショーも、毎年のテーマに沿って午前午後合計4回の開催。3年生中心に企画から制作まで全て学生によって行われるショーです。今年のテーマは「輪舞~rondo~」。

私はこちらで2005年より、現代文化学部・国際ファッション文化学科の学生対象の「ファッションとアロマ」という講義を担当しています。アロマテラピーや最新フレグランスなど現代の香り文化の背景を学びつつ、香りに刺激される過程で培った感覚表現力を「香りのビジュアルデザイン」で発揮することを目指す内容です。この講義の最終課題は、天然香料の香りを視覚デザインし平面作品に仕上げることであり、これらの作品も毎年けやき祭の教科展示室の一角に展示されます。

2010年のけやき祭で使用されたポスターは、一昨年、2009年度の「ファッションとアロマ」受講生が、イランイランの香りをビジュアライズした課題作品を元に構成したそうです。こうしたポスターも学内応募があるとのこと。確かに力作でした。

今日、来る6/4の展示の打合せにと小平キャンパスに行ってきました。今年も力作が展示されます。多くの方にご覧いただきたいと思っています。






2011年5月22日日曜日

「タイヨウのした」で出会ったオレンジのピール

デザイナー小林幹也さん主宰のセレクトショップ、「タイヨウのした」のオープニングイベントに行ってきました。

小林さんの椅子は見るからに座り心地がよさそうでしたし、" UKI HASHI "の存在感にも魅かれていましたから、こうしたモノを彼自身がセレクトしたモノとともにリアルに見て触れられる場所ができたことを嬉しく思います。

1階に入ってすぐにひときわタイヨウのような明るい色を発見。静岡・伊東産ニューサマーオレンジのピール。ほんのひとかけらでなんと豊かな香りでしょうか。程よい甘酸っぱさとこの鮮烈な香りはクセになりそう。そしてつくりたてのレモンマーマレードも試食。甘さと酸味の間を心地よくつなぐかすかな苦味が魅力です。作ったのはフルタヨウコさん。旬のフルーツでこれからも色々なピールやジャムを作られる予定だとか。










2階、3階と小林さんの手がけた家具が展示されています。椅子は想像どおり、どれもこれも座り心地のよいものばかり。思わず座ったまま小林さんやフルタさんとのんびり話し込んでしまいました。清々しい香りのもとはもしや?と思って尋ねてみたら、床は杉の板張り。関東地方で育っていた杉の木だそうです。深呼吸したくなるような心地良さはそのせいですね。











ニューサマーオレンジの香りがあまりに印象的だったのでフルタさんに色々質問。爽やかなこの柑橘は春から初夏が旬。静岡ではニューサマーオレンジ、宮崎では日向夏、高知では小夏と呼ばれているのだとか。さすが夏の香り。オレンジのピールは私も乾燥させたことがありますが腐らずいつまでもいい香りがして驚いたものです。それだけにこの香りを生かした砂糖の使い方には思いやりが必要。↓はフルタさんが椅子に座ったお客様とお話されているところ。










帰り際に、20日に私が買ったばかりの雑誌" FIGARO japan " 421号(7月号)がディスプレイされているのを発見。"Dépêchez-vous! (急いで!)"のコーナー2p目の40p下に「タイヨウのした」が、ソファやテーブルと共に紹介されていたのでした。

今朝またもやオレンジピールを一口。一瞬で朝を感じました。何かをさあ始めよう、という気持ちになります。是非大切な方へのプレゼントにもしたいと思います。







2011年5月20日金曜日

春の新作フレグランス「屋根の上の庭」(エルメス)に期待

昨年からエルメスのフレグランス "Voyage d'Hermès" を愛用し、使い切ってしまったという知人から、次はどうしようかと相談を受ける。

同じエルメスからは新作が先月にすでに発売。「屋根の上の庭」。イラストから想像するに、光の中で輝き、そよぐ植物たちのさざめきとともに、しっとりとした土のぬくもりが感じられる爽やかさ。

地中海、ナイル、モンスーン、とエルメスの旅は続き、4作目にパリの本拠地へ。これは "Voyage d'Hermès"が大のお気に入りだったという知人にぜひ知らせなくては。

調香師のエレナ氏がこの香りにこめた想いが記載されている記事も発見。
ー4月10日発売!「エルメス」から庭園のフレグランスシリーズ4作目「屋根の上の庭」ー MEN'S NON-NO Webより、2011年4月10日のニュース。

またひとつ、爽やかな風に出会えそう。




2011年5月19日木曜日

薔薇の切手を眺めて…心はバラ園へ

郵便局で見つけた花々の切手。静岡のつつじや愛媛のみかんの花など、可憐な花がたくさん。そんな中、5月から初夏に向けて咲き誇る薔薇の花の切手を選びました。








封筒に柄ものをほとんど使わず白が多い私は、切手にはこだわりたいと思い、素敵な切手を発見するとついつい入手。この切手は「赤坂迎賓館とバラ」というタイトルです。

最近、散歩していてもあちこちで色々な薔薇を見かけます。眺めても、香りにふれても心が華やぐ花です。そんなことを思っていたらバラ園に行ってかぐわしいひと時を体験したという知人のメッセージ。たとえ今すぐ行けなくても、心はバラ園へ。国内からさっそく調べてみました。

まずは、平成13年10月に、国内のバラ園では唯一、環境省より「かおり風景100選」の認定を受けた山形県村山市の東沢バラ公園。最盛期の6~7月にはバラ祭りも行われます。6月に訪れるとバラとともに同じバラ科のサクランボも見られそうですね。

関西の方によると、姫路ばら園も素晴らしいそうです。サイトも薔薇のイメージで作られていますね。

関東(東京・千葉・神奈川・埼玉)各地で楽しめそうです。バラ園ガイドを発見。

国外もこの季節、バラは華やかに咲き誇ります。

ブルガリアでは6月第1週の週末はバラ祭りが開催され、バラの谷カザンラク周辺には世界各地から観光客がやってきます。紀元前の昔から存在していたといわれるオールドローズの一種であり、香料用として世界的に名高いダマスクローズの産地です。

こうしたオールドローズはもちろん、モダンローズの数々はヨーロッパのローズガーデンでも5月以降楽しむことができます。フランスのマルメゾン城、テートドール公園、バガテル公園…ドイツのロザリウムザンガーハウゼン、イギリスのモティスフォントアビーバラ園など…。詳しくは国際香りと文化の会会報誌VENUS VOL.22 に掲載された、庭園研究家の鈴木せつ子氏による「世界のローズガーデン」に記されています。



2011年5月17日火曜日

春の中に「もうすぐ夏」…グレープフルーツの香り

グレープフルーツの香りを好む人は多い。
鼻にぬけるかすかな苦みがこの爽やかな甘さを強調する。
幼いころ、半分にカットしてスプーンですくって頂いたときの記憶とともに。

春先から初夏にかけてフロリダ産が旬…店頭にあふれている。
この時期だからこそ、とちょっと奮発してなるべく大きくて形の整ったものを調達して食すと抜群に美味しい。こういうときは半分カットなどしない。丁寧に一房ずつ皮をむいて盛り合わせ、ミントの葉を添えてみたりする。
ふるふるっと爽やかなみずみずしさ。春の中に夏を感じる気分。

同じ柑橘類なのにレモンともオレンジとも異な味、香り。
かつてポカリスエットの出始めに感じたちょっとミステリアスなフレーバーとしてもこのグレープフルーツが使われたときき、現在に至るまで改めて広く愛されてきた背景をおもう。

グレープフルーツ精油は諸刃の剣のような香り。上手に使えばリフレッシュにも痩身促進にも使えそうな一方、特定の薬剤と併用するとその効き目に好ましくない影響を与えるとのこと。興味のある人は、医師である吉井友季子さんの著書「香りでやせる!グレープフルーツダイエット」(マキノ出版より2005年発刊)
にて実例に基づく詳細をどうぞ。この香りを積極的に吸い込むだけで体脂肪が燃えやすくなるとしたら、夏に向けてカラダを軽くしたい人にとって味方になるかも。

…そんなことを思っていた今日、散歩途中で見つけた今日新発売のパンはなんと、みずみずしいグレープフルーツ使用のフルーツデニッシュ。確かに中のグレープフルーツとカスタードはフレッシュで爽やかな甘さ。かすかに散らされたピスタチオとの相性もグッド。これで周囲の生地がバターの香りあふれるパリパリだったらさぞや…とは思いつつ、こうしたグレープフルーツの香りが活かされた商品の誕生がちょっと嬉しい。




2011年5月15日日曜日

香りに助けられた初夏6月から9月の記録

前回ブログでご紹介した小田急線車内リフレッシュのエピソードは、多くの方に興味を持って頂けたようで嬉しく思います。現代人が、実は見えない香りのおかげで助けられている、ないより快適性を得られているということがたくさんあるということ、もっと知ってもらいたいものです。

そこで私からも実体験をもとにエピソードをご紹介。この6~9月という日本が梅雨から高温多湿の猛暑を迎える夏の時期に、香りに助けられた3種の記録。

1. エアフレッシュのおかげ?室内干しも支障なく
雨で空気じめじめの日。洗濯物を室内に干すしかなかったときのこと。数部屋に分けて干し各部屋の空間上部に向けて天然精油ブレンドのエアフレッシュナーを2~3回スプレー。洗濯物に直接ではなく、干す空間にスプレーしたのです。結果、乾いた洗濯物から生乾きの不快なニオイはほとんどしませんでした。部屋干し専用の洗剤も試したのですがいまひとつ…結局干す空間に雑菌があり屋外のように風で対流せずさらに雑菌が増えやすい状態…であればその空気に影響を受けるのでしょう。干す空気自体を少しでも綺麗にすることが大切では?と仮定した結果でした。
私がよくつくるエアフレッシュナーは無水エタノールと精製水がベース。希釈する天然精油はレモン、ライム、オレンジスイート、ベルガモット、ゼラニウム、ラベンダー、ローズマリー、ペパーミント、ティートリーなどから数種類をブレンドしたもの。特に殺菌力が強いといわれているシナモン、クローブ、タイムなども上手にブレンドすれば良いかもしれませんが、残り香が強いのが気になる方はほどほどに…。

2, 会いたくない虫に会わずにすむ?虫の嫌がる香り
まずは蚊。蚊の多い国ではいまもシトロネラ等の香りが蚊除けに使われているようです。私もレモングラス、シトロネラ、ユーカリ・シトリオドラ、ゼラニウムなどにこの効果を確認しました。これらの香りを単独またはブレンドして香らせていると、夕方玄関の戸を開けて掃除をしていても蚊が入ってきませんでしたし、入ってきたときも精油原液を染み込ませたコットンなどを置いておくと避けて外に逃げようとしたり、弱って低空飛行したりしていました。
ゴキブリに関しては確信はありませんが、ペパーミントの精油を薄めた水ふきんでフローリングや排水溝の近くを拭いて掃除をしておくと近づいてこないような? 気がしています。
衣類の虫喰いもこまります。パリにホームステイしていたときは衣類の虫除けにラベンダードライのサシェが使われていましたし、パチュリもカシミアなどの高級繊維を衣蛾の幼虫による食害から守るのだとか。確かにうっすらラベンダー精油を含ませたコットンを入れた衣類ケース…虫の害は無かったです。


3, 面接の場もリラックスと自信をくれたフレグランス
大学4年の夏のこと。
私は新卒採用もされていない会社に、半ば押しかけのように面接を手紙で頼み込み、緊張するはず?の面接にのぞみました。そのとき着ていた服は濃紺のワンピース。そして自分の鼻にほんのうっすら届く程度に軽く身につけたフレグランス。面接では社長、各セクションの長2名の計3名と机を挟み2mは離れていたと思います。先方には香りは伝わらなくても、鏡で自分の顔を確認できない私にとってかすかな香りが応援してくれたことは自信につながりました。結果、緊張することもなく笑顔で面接を終えることができ、採用していただくことができました。好きな香りが私に平常心と笑顔をもたらしてくれたことは間違いなさそうです。




2011年5月12日木曜日

見えない安らぎ・快適性…小田急線10年の試み

一昨日は珍しく体調を崩した。喉の痛みと微熱。自宅で仕事をしながらも頻繁にベッドに横になったり塩水うがいを繰り返すなどの静養でなんとか回復したが、この日特に気をつけたのが室内の換気とその空気の清浄感。

自宅で発生する様々なにおいはこもってしまうと不快なものになるので換気が必要。さらに外気といえども必ずしも心地よい薫風ではないので、軽く天然精油をブレンドしたエアフレッシュナーを各部屋にひと拭きずつして清浄感を保つようにした。香り自体は強く残らないが何か空気が綺麗になったような気がする。それでようやく安心してリラックスし仮眠をとることができた。

におい物質は鼻で呼吸をするとともに否応なく体内に入ってくる。良好な状態であれば清々しく感じられ、そうでなければそういう環境下に長くいると体調に影響を与えることは避けられないと思う。東京で混雑する車内にいてそうした危険を感じたことはよくあった。

私の利用する小田急線では、2001年から、梅雨時の車内環境リフレッシュのためにと天然精油をブレンドした香りを微量、車内に流すという試みをしている。当時の新聞でこの試みについて読んだ記憶では、様々な人へのテスト、精油選択、香り濃度の検討によって実施されたそうだ。全車両で流したいところを、たとえ微量でも体調によっては気になるという人への考慮もあり偶数車両のみに実施されている。好評により6~9月の期間に行われているとのこと。

この時期にならないと小田急側からも目に付くようなPRはあまりされていないようだが、よく調べてみるとこの香りの供給元の会社が見つかった。日本デオドール株式会社のページに小田急電鉄へ2001年より供給と記されている。

私の周囲には、よく小田急線を利用しながらもこのことに気付いていない人は多い。それ位、香りの流し方は微量であるともいえるし、混雑による不快臭が香りと相殺されて感じにくくなっているせいとも想像できる。しかし、気付かないとしても殺菌効果を有するといわれる天然精油の香り物質が多少なりとも人の身体への負荷を軽減してくれているとしたら、それは有難い試みと思う。

あからさまににおいを強調するのではなく、車内を少しでも快適な空気にという小田急線の試みには感謝している。このようにさりげなくお客様の健康を気遣う気持ち、見えない安らぎの提供こそホスピタリティの大前提ではないかと改めて思う。かつて疲労困憊した時に利用した、山の上ホテルの館内の空気と水に深い安らぎを感じて癒されたことを思い返している。



2011年5月10日火曜日

GUEST & Me…ゲストと私の間に漂う香りのおもてなし


"GUEST & Me" 。ちょっと前から気になっていた香りのプロダクト。身につけるためのフレグランスではありませんが、日々を少しでも心地よくすごすためのラインナップになっています。

身体を洗うための石鹸。清潔になったという確認とともに自分からほのかに優雅な残り香が漂ったら天国気分ですね。

空間を静かに香らせるフレグランスバー。どんな人でも、入ってきたときにさりげなく素敵と感じる薫風を感じるほうが笑顔になれるに決まっています。

大切な睡眠に安心して入れるようにとシーツや枕カバーに使用できるリネンウォーター。いざ寝ようと思ってリネン類が疲れた自分を想像させるようなにおいでは、ひと時の安らぎに浸ろうという気にはなれませんね。清潔で、ドリーミングな芳香がかすかに感じられてこそ。

そして一日のうちで最も頻繁に洗う手。ネイルを華やかに飾るのも良いですが、しなやかな手の動きとともに綺麗な空気が漂ったら、自分だけでなく周囲の人はどんなに幸せでしょうか。私が生まれて初めて香水をつけた場所は手首と指先。親しい人にものを手渡したり、「どうぞ」と示したり。ふっと感じるか感じないかくらいのデリケートさで香りを伝えたかったことを思い返しています。

見えないけれども…。
細かくて小さな香りの分子はいつも人と人との間に浮遊しています。
ゲストは必ずしも外からいらっしゃるお客様だけではありません。大切な家族と自分との間にも洗練された香りを漂わせたいものです。日本人が伽羅をはじめとする香木の香りに抱いた感銘。その心とともに発展した香道の文化が現代のライフスタイルに例えばこのような形で反映されていくとしたら、素敵なことであると思います。

見えないものだけに…。
コピーライター糸井重里氏とデザイナー佐藤卓氏の伝え方、見せ方へのこだわりも感じられます。




2011年5月8日日曜日

香り かぐわしき名宝 展 (Fragranceーthe aroma of the masterpieces)

うっすらとした霧雨の土曜、5月7日。
みどり薫る上野の森を抜けて東京藝術大学大学美術館へ向かいました。




展覧会のポスターに使用されている、夜の梅が匂い立つ日本画は、速水御舟による昭和5年の作品。実物は是非直接会場でご覧の上、馥郁たる香りを想像していただきたいと思います。

香り かぐわしき名宝 展 が開催されてからちょうどひと月目。このような展覧会が、茶道、華道に並ぶ香道という芸道を発展させた日本で初めて開催されるという事実。何故今なのでしょう。私にとってはずっと以前から待ち望んでいた展覧会でした。数多くの芸術家を輩出している東京藝術大学とともに日本経済新聞社が主催であり、さらに1828年創業以来フランス香水文化を築いてきた歴史あるゲラン社が協賛するという背景。ここに、有史以来培われてきた文化における香りの価値を、広く一般に伝える必要性が強調される時期がついに訪れたことを実感します。





595年という、今から1400年以上昔の日本人は淡路島に漂着した「沈水」が芳香を発する香木であることを発見し、宝物として使用しようとする感覚を持っていました。会場では、本物の白檀の木から漂う繊細で雅な香りを体感することもできました。こうしたものの価値を感じる心が以来脈々と受けつがれてきたとすれば素晴らしいことです。

会場の展示を順に鑑賞していくと、いかにそれぞれの時代において人が、特に高い身分の人であればあるほど、人間としての自然を超えて、より良く好ましい状態であろうとしたか、その香りとの付き合い方を通じて感じられるのではないかと思います。そしてそれはまさに文化そのものです。

昨今の日本の香り嗜好について一部では、香りなどない方が良く無臭を好む傾向があるという声もききます。ですが、江戸時代に庶民までもがあれほど香を楽しんでいた様子から考えても、本当に「香り」が嫌われているのではなく、香り方、香りとの距離感に問題があるだけなのかもしれません。視覚や聴覚に偏り過ぎず、五感をバランス良く使う生活を改めて心掛けたいものです。

展示順路では最後に当たる「絵画の香り」。この展示が始まる場所に掲げられていた文章の中に、速水御舟の印象的な言葉が綴られていました。
「芸術の上に常に欲しいと思うのは芳しさです」
そうした芳しさを、この展覧会で多くの方に感じていただきたいと思います。

参考文献:
「香り かぐわしき名宝 展」図録


2011年5月7日土曜日

これから母となる人にも「母の日」を

母の日。
母に感謝をこめてその気持ちを表現する日ということですが、私が昔から母に言われてきたのは「私に何かプレゼントなんていいの。貴女が元気でいてくれることが何より。」そして70才をとうに過ぎた母は今でも何かと言えば「元気でいる?ちょっと美味しいもの見つけたから送るね。」と電話してきて、私がそのお礼とともに喜んでいることを伝える電話を嬉しく思っている様子。

こんな気持ちが最近しみじみとわかるのです。自分も母になったからでしょう。とにかく我が子には元気で大きくなってほしい、ちゃんと生きていけるように丈夫な身体と心をもって、と。もちろん我が子から心のこもった素敵なプレゼントをもらった時も嬉しかったのは事実です。

さて、母といえば子を産んでからも守り育てる苦労はありますが、出産前、自らの体内で育てている約10ヶ月もそれはそれは大変なものです。つわりから食べ物への気遣い、感染症からの防御、重くなる身体を支える足腰のケア…子を守るために自分の身体をまもる日々は、もうすでにこの時から母としての大仕事が始まっていることを自覚することでしょう。

「母の日」は、こうした出産前の女性にも周囲からいたわりと優しさを伝えたいものです。母の喜びを感じる前提には女性としての深い喜びがなくてはなりません。そうした思いにひたって心穏やかに小さな命を育むことができたら…と、昨年臨月の女性にローズオットーの香りの使い方をご紹介したところ、春に嬉しいおたよりを頂きました。
「ローズに癒されて・出産前」…ちょうど5月は薔薇の季節です。





2011年5月6日金曜日

「虹の女神」アヤメに出逢う (J' ai rencontré un iris…)

まるで虹色。虹色の女神?不思議な花に出逢った。
よく見るとアヤメ。





帰宅してから調べたところ、仏和辞典にはアヤメを示す"Iris" と"iris"の二語が続けて記され、小文字で始まる後者が植物名または眼球の虹彩を示す単語であるのに対し、大文字で始まる前者は「虹の女神で神々の使者」という固有名詞であるという。私がこの花から一瞬感じた言葉の通り。

そう言えば、PARFUM157号に、アヤメ科アイリスの香料が使用されたフレグランスの特集ページがあったと想起。そのページを開くとやはり「虹の女神」と記されていた。この見開きページに記されたフレグランスの中には、イリスの花の香りの追求から生まれたプラダ インフュージョン ディリスや、調香師が浮き世という儚い夢の中で咲いているかのようなアイリスに注目したというエルメッセンス・コレクション イリス ウキヨエ、ニューヨーク発のブランドであるルラボによるアイリス39などが紹介されている。

神々の使者…ということから
この花に出逢えたことを、良い知らせと思いたい。




2011年5月5日木曜日

国際香りと文化の会より・6月は在仏調香師による講演会開催

連休中の昨日、国際香りと文化の会から6月講演会の案内が届く。

私はこの会の会員になって7年目。年に数回、興味深い見学会や講演を楽しんでいる。香りの仕事をしている私には貴重な情報源であり、年一度発行されるVENUSもまさに完全保存版。昨年度の薔薇特集号には私も寄稿させていただいた。

今年3月後半にも、ランの専門家による講演会が予定されていたが、東日本大震災の影響が考慮され延期となった。講演会の内容ももちろん楽しみではあったが毎回ここでお会いできる調香師や香料業界の方々との交流も貴重なので、新年度の案内がこんなに早く届いたことは非常に嬉しい。

さて、6月7日の講演演題は二つ。
①「フランス香水事情~香りの嗜好と流行をめぐって~」
講師は新間美也氏(調香師・在パリ)
新間美也氏といえば、1月のブログ「香水のゴールデンルール・読後1」にてご紹介。フランス在住の日本人調香師としての視点から、日仏の嗜好や流行の相違点もお話いただけるだろう。
②「香りの空間演出」
講師は吉武利文氏(香りのデザイン研究所代表・別府大学客員教授)
美術館やプラネタリウム、各種イベントでの香り演出などご経験豊かな吉武氏のお話にも期待。

この講演会は会員向けのものなので、会のWebサイトに掲載の入会案内にそって入会、会員となれば個別に案内が届き申し込むことが可能。香りに関心のある個人、企業を問わず、得られる情報と面白さという価値は十分あると思うのでこの場を借りてお勧めしておきたい。




2011年5月3日火曜日

フランスをひとくち・「3種のベリー、とろけるキャラメル」

美味しいコンフィズリー(フランス語名詞: confiserie 砂糖菓子)を発見。

すでにパッケージの写真から魅かれてしまったのですが、一粒ごとにまるで白いブルーム(果粉)をうっすらまとった摘みたてブルーベリーのような外観が愛らしく、数粒お皿に。





早速口に含んでみると期待的中。まず華やかなラズベリーを中心としたフレーバーが、口溶けと共に他2種のベリーとともに立体的な香りを拡げてくれます。そして…加速度的に溶け始めるキャラメル。ベリーソースとキャラメルクリームのハーモニーが絶妙。

実は昨晩、食後のお茶にと他にケーキも買ってきていたのですが、この一粒ひとくちですっかり満足してしまい、ケーキは本日いただいています。それでもあのベリー&キャラメルの数秒間の芳醇な香りが忘れ難く、また一粒。

「3種のベリー、とろけるキャラメル」はカンロの新製品。「フランスをひとくち」というコピーと共に、「メゾン・ド・コンフィズリー」というフランスの砂糖菓子文化紹介サイトが楽しめるのも魅力です。

砂糖菓子を示すフランス語名詞、confiserieに関連して…。
コンフィ (confit,またはconfite) は、砂糖や酢、油などに漬けた、を示す形容詞。コンフィチュール(confiture)はジャムを示す名詞。それぞれすでにカタカナで日本語に入り込んでいます。フランス語の音で呼ぶと何となく豊かな香りをイメージできそうで…やはり言葉は文化の象徴、と思います。



2011年5月1日日曜日

ギャラリーの魅力・美篶堂ギャラリー

2003年から2010年まで、7年間の美篶堂ギャラリーにおける過去の展示。数えてみると159。おかげで多彩な創り手の方々に出逢うことができ、自由なクリエイティビティに刺激を受けた。日常の中で何気なく見てきたもの、付き合ってきたモノにこんな楽しみ方があったのかと気付かせられること多々。モノだけではなく、今のこの時代の空気を感じながら生きている創り手さんたちとの出逢いがあったことを何よりも嬉しく思う。

同じように、展示された作品を鑑賞できる場所といえば美術館がある。私はパリに滞在していた頃は美術館巡りに大半の時間を費やしたことを記憶している。歴史的遺産ともいえる作品も多く、そこで鑑賞した作品の作者の多くは既に他界していた。一方、ギャラリーという存在を強く意識したのは20代の半ば頃、主に現代ガラス作家の作品を扱うギャラリーで仕事をしたときだった。オーナーの価値観で選んだ作家に直接交渉し、作品だけでなく作家にも可能な限り来日(米国やドイツ等から)してもらい、私も直接彼らと様々な話をした。作品を販売することを前提に展示するギャラリーでは、来廊者に「眺める体験ができて良かった」だけではなく、「欲しいと思える作品に出逢えて良かった」という喜びを提供できる場であることを目指していた。

美篶堂ギャラリーでは、私自身も香りの作品を出展させていただいた。2005年,2007年,2008年のクリスマスプレゼント展において他の創り手の方々の作品と共に。2007年にガラス作家とのコラボレーションを展示できたときの内容を当時のコラム「出展」にも記している。これもひとえに私が最初に作ったアロマキャンドルに関心を寄せてくださったオーナーのおかげ。このギャラリーのおかげで、「温」「凛」「想」「縁」という4種の香りの作品を創り、一部の方々に喜んでいただけた経験も私の宝物そのものであると思う。