2011年1月30日日曜日

読み直しという娯楽・シャーロック・ホームズ

気分転換に本の読み直し。束の間のタイムスリップ。

今日本棚で目を留めたのは、シャーロック・ ホームズの全10冊の文庫本。最初に読んだのは私が小学1年時から数年の間です。挿絵入りの子供向け全集で、毎月配本を楽しみにしていたものでした。当時面白かったのはホームズの謎解きそのものだったり、見たことも聞いたこともないイギリスの風景、人の生活様式でした。子供心に怖いなと思ったアヘン「唇の捩れた男」、秘密結社K・K・K「オレンジの種五つ」等があった一方で、ホームズが暗号を解読する「踊る人形」の中で言った言葉、「人間の発明したものなら、人間に解けないはずはありません。」に励まされたりと深く記憶に焼きついたものもあります。

そして昨秋改めて文庫本全10冊をそろえて完読。かつて読んだ物語はほぼ筋書きを憶えていたけれど、背景となる当時のイギリス社会、周辺の世界情勢への共感は大人になってから。そして少なからず自分が S.H氏に影響を受けていると感じました。「何かに取り組むとき、真っ先に考えなくてはならない問題は何か、その解決に必要なことは?をまず考える」このような自分の思考プロセスをふりかえります。

当時と今とでは、自分の知識量も体験量も違います。文章からぼんやりとした絵しか描けず、挿絵に助けられていたイメージが、今では文章のみから結構繊細な人の表情まで描けるのが実に楽しいし面白いのです。そして、改めてふふふんと思って目を留めたのは、ホームズの嗅覚や匂いに対する記述。☆間は「バスカヴィル家の犬」中のホームズの言葉の一部です。


「…あれを眼のそばへもってきてよく調べていると、白ジャスミンという香水のにおいがかすかにするのに気がついた。いやしくも探偵だというからには、かならず鑑別できなければならない香料が七十五種ある。…」


ジャスミンの香りは確かにヨーロッパの人達に愛されてきた歴史がありますし、ローズと並んで花香料の双璧を成すものですからホームズが知らないわけはないですね。75種類が何であったのかは興味深いところです。






2011年1月28日金曜日

甘く香る南果・BAEL FRUIT TEA

ちょうど5年前の2月、タイからのお土産にいただいたハーブティーが美味しく、ずっと記憶の中に残っていました。THANN native のBAEL FRUIT TEA

当時は日本未発売でしたが現在は日本のTHANNショップまたはWebから入手できるようになりました。パッケージもあらたまり、以前は10bags だったのが2倍の量になってたっぷり楽しめます。私は表参道ヒルズ地下2階ショップで入手しました。




お湯を注ぎ2分ほど経つと、香ばしさとほのかな甘さが伝わってきます。ココナッツやバニラとも共通する、やわらかく漂う上品な甘さが鼻から通り抜けていきました。口に含んだ第一印象は「優しさ」。まさにほっとする和みのお茶。おもに東南アジア~タイに生息するこの植物の実がフレッシュなうちに丁寧にドライフルーツにされ、ハーブティーとして親しまれているようです。南の国の太陽に育まれた優しい味わいは一度体験すると忘れられません。私の新しいお茶のバリエーションのひとつになりそうです。体調を整えてくれる伝統的効能もあるようで嬉しい限り。

THANNショップの方に、このお茶にシナモンを合わせたものもとても美味しいとうかがいました。ますます甘くエキゾチックなイメージが広がります。そこで私が思いついたのは、ギフトにピッタリということ。最近美味しいスイーツをプレゼントしたくても、周囲に糖分を控えていらっしゃるという体質の方が増えてきましたから…そうした方へのギフトとして喜ばれるかもしれません。

個包装のtea bag にはひとつひとつ小さな黒のオモリがついています。紅茶など紙のtea bagにお湯を注いでいるとき、お湯を注ぐ勢いで持ち手をお茶の中に滑り込ませてしまった失敗は何度か経験がありますが、このオモリがあるとそんな心配はご無用。黒いオモリだけを集めてつなぐとチョットしたアクセサリーが作れそうな想像も出来てお洒落な気分にもなれますね。



2011年1月25日火曜日

楽園の記憶 ・アロマトリートメント

昨秋、東京都庭園美術館にて開催された「きらめく装いの美 香水瓶の世界」の図録。展覧会監修者であり美術史家であるマルティーヌ・シャザルによって書き下ろされた人と香りの長い歴史を興味深く読んでいます。古代エジプト・オリエント・ギリシア・メソポタミアについての記述中に何度も登場する言葉、「香油」。当時の人々はすでに芳香が油脂に溶けやすいことを知っていました。香料は油脂に混ぜられて保存され、それを身につける人の体温によって芳香が解き放たれたといいます。宗教儀式にのぞむとき、誕生時、婚礼時、そして弔いの時、人の身体には香油が塗られたそうです。

現代におけるアロマテラピートリートメント。植物から抽出された精油(天然香料)を希釈した植物油を、温かい人の手によって皮膚に塗布し、心地よいリラクセーションを提供するものです。精油はスイートアーモンド油やホホバ油などに溶け込み、人の皮膚にもよくなじみます。適度な圧をかけて呼吸に合わせた速度で塗布される心地良さはまさにパラダイス。精油成分は皮膚からも微量が吸収され、血流にのってゆったりとしたリラクセーションをもたらします。

この現代の癒しの方法は、香りと接触による心地良さを最大限に提供する、嗅覚・触覚のエンタテインメントともいえるかもしれません。視覚・聴覚情報が圧倒的に多いこの現代にあって嗅覚と触覚の心地良さを集中して体感できるのです。本来五感をバランス良く駆使して生きるのが生き物であるならば、嗅覚や触覚にも満足できる刺激が欲しいところ。かつて紀元前の昔に体感していた香油による楽園の記憶は、本能のどこかに眠っているような気がします。

私がアロマトリートメントをお客様に提供する中で特に多くリクエストいただいたのはローズオットー精油によるものですが、この香りでセルフトリートメントを楽しめる方法をまずは「ローズ・ヘアケアの心地良さ」に於いてご紹介しています。

2011年1月22日土曜日

手軽な携帯香・ソリッドパフューム

海外渡航の際、化粧水や香水など液状のものは持ち込みが規制される中、お気に入りのフレグランスを持参するのもなかなか厄介。アトマイザーに移し替えたくても多くの既製品は開口部を簡単には開けられません。では本体はといえば、ガラスボトルでアルコール希釈ですから気を遣いますね。

さらにちょっと気分転換に香りを付け足して…と思っても狭い機内の化粧室でシュッとスプレーしようものならたちまち拡散して香りがたちこめそう…。なにしろ長時間じっとしているわけですから動作とともに「追い風」で香りを程よく流すこともままならず。

手軽に機内に持ち込めて、なおかつちょっと付け足したいときにも周囲に迷惑をかけず、自分にとっていい感じにふわり心地よく香りと共に居られる…そんなときに便利なのがソリッドパフューム。

既に色々と商品化されてはいますが、香り自体が好きなものを選びたいので色々探し…先日一つ入手してみました。数年前からそのナチュラルかつ洗練されたブレンドセンスで時々愛用していたタイのブランド、THANNのもの。



香料というものは大概、油脂かアルコールに希釈できるものです。液状のフレグランスはアルコールに希釈されていますが、このソリッドパフュームはシアバター、ホホバ油等の油脂やビーズワックスなどに混入されています。脈うつところにそっと少量つけると、香りの立ち方はアルコール希釈のものよりはるかに柔らか。そうそう、精油の香りの魅力もなかなか原液の強い香りでは伝わりにくいものですが、アルコールに希釈したスプレーよりも皮膚へのトリートメント用に植物油に希釈したときのほうが、「この香り方好き!」と言われることが多いような気がします。

手のひらサイズのソリッドパフュームで、長旅も快適に。

2011年1月19日水曜日

「香水のゴールデンルール」読後1

遅ればせながら入手。昨年末に原書房から出版された現役女性調香師の著書。
ここは、時間経過にともなって華麗に変化する香りのように、この本を購入読後第一印象をトップノートに見たてて記しておきたいと思います。

まず気に入ったのがタイトルの言葉の潔さ。「ゴールデンルール」!
まずは自分が読み、香水を知りたい他人にもすすめたくなるフレーズです。
新間美也(しんま みや)さんという著者のお名前も魅力的。以前ファッションサイトで服飾史家の中野香織さんとの対談を拝読し興味を抱いていたところです。
お名前を一度目にして忘れられなくなりました。

装丁のビジュアルにも魅かれました。表紙…真っ白な中、中央にタイトル、その上に鮮やかなフルーツカラーの衣装をまとう女性のイラストがひとつ。めくると、表紙のスノーホワイトによく映えるレッドが一面に。こうしたモノとしての美観も本の魅力のひとつ。大切に読みたくなります。




さて内容を一読。
幼少期以来誰に教わることなくフレグランスを使いはじめ、感覚的に選び、服を着るように、生きるために、当たり前に使ってきたフレグランスと自分との関わりを見つめ直せたと思います。

特に第2章「個性からの香水選び」を読み、パーソナリティを知るキーワード選びをして感じたのは、私にとって個性とは何なのかということ。私は毎日違うと自分では思っています。毎日気分が違い、着る服も着方も違い…時間の流れ方も違うから。一瞬一瞬の個性表出、というものならいえるかもしれないけれど…そうちょうどツイッターの呟きのように。

でも私のパーソナリティをこじんまりといくつかのフレーズでまとめるのは難しいし、限定すると私自身は窮屈になってしまいそう。他人からよく言われるキーワードは確かにありますが一定ではない。いまの価値観の傾向は自分でも言えそうですが。そのときごとの自分が求める空気に似合うか、その積み重ねが一つの傾向を提示するかもしれませんね。これまで自分が好んで着ていた服、髪型、選んできたいくつかの職業を見直すと見えてくるものが…。あえて言葉にしていく作業の中でおおいに発見があります。

今どんな気分か。それが今のパーソナリティ。そのときごとに出会えた人がその印象で私をとらえるでしょう。一瞬も一生もきらめいて…とどこかの化粧品のPRコピーにありましたが一瞬を大切にすることが継続して一生になるなあと。

読後のトップノートはこの位で。

2011年1月18日火曜日

茹で鶏で美しく

今夜も7時半頃ようやく自宅付近着。疲れてはいるものの外食はしたくなく、なにかササっとつくって9時にはのんびりしたいなと…さて何を手早く作ろうかと思ったとき、いつも考えるのは茹で鶏メニュー。

コラーゲン+ビタミンC入りのスープと蛋白質豊富な鶏のソテーという皮膚に嬉しい2品が同時にできること、鶏肉に合わせて必ず使用する生姜が身体を温めて代謝をアップさせてくれること、油をほとんど使わないので料理中周囲に料理臭がたちこめないこと…この3点が特に私のような仕事の女性にとって嬉しいポイント。

まず鍋に水、塩、生姜スライス、長ネギ一本ザク切り、大根千切りをいれて軽く沸騰したらそこへ少量の料理酒と鶏肉投入。皮付き胸肉ブツ切りまたはササミがおすすめ。

再沸騰してアクをとり、中火で5分程度茹でたらいったん火を止めて肉だけを取り出しフライパンへ。肉に塩少々、オリーブオイル、好みの香辛料をひとふりしたら強火で片面に軽く色がつくようソテー。このときフライパンには蓋を。熱効率のためだけでなく匂いや油ハネ防止のためです。

ジュ…といかにも焼き色がついた音がすると思ったら肉を裏返し、さらに予め手でちぎってさっと洗っておいた野菜(キャベツ、レタス、白菜)や、薄く千切りにしておいた人参などを投入して再度蓋をして中火3分。蓋をあけて全体をよく混ぜ、好みの味で仕上げます。シンプルに塩だけを足すならどんな香辛料とも合いますが…くれぐれも最初に選んだ香辛料に合う野菜と調味料選択をするように。

さてスープ。一度味見をして塩加減が足りないなとおもったら塩か醤油を少量ずつ足して調整。ワカメなどがあれば投入して再沸騰すれば出来上がり。

事前にご飯が炊いてあればベストですがなければ、スープにうどんをいれても良いと思います。塩の量は私は控えめですが、特に寒いときや体調によって欲する量が違うので味覚本能に委ねてみます。自分の感覚に問うことが肝心。

今夜もこのメニューで疲労回復。身体も温まり、ホッと一息です。
美しさは丈夫な皮膚と活発な代謝から。簡単につくれると精神的にもラク。食事後も料理の匂いが残っているとなんだか興ざめですが、この方法ではそんなこともなく…直後のお茶タイムにも邪魔になりません。





白ブラウスとEcume de Rose

昨日外出時に着たのは、新疆綿のつややかな光沢の白ブラウス。胸元にゆったりとしたフリルが流れ、つやのある素材感がひきたっています。襟の形もシルエットもごくごくシンプルなのですが、この白の光沢がまさにシルクのような質感で、当初ダークカラーのジャケットを合わせようとしていた考えが変わってしまいました。

選んだのは鮮やかなブルーのカーディガン。ブラウスを着たシルエットをそのまま包み込む、ややタイトなニット風ですがこちらも実はコットン製。白の上にこの、太陽を浴びてきらめく海のようなブルーを重ね着したところ、ひとつのフレグランスを思い起こしました。

Ecume de Rose(エキューム ・ド・ローズ)という名のその香りは、パルファン・ロジーヌというブランドのもの。エキュームとは、海面などの泡を意味するフランス語女性名詞。かつてこの香りを気に入って選んだとき、私がイメージしたのは海の泡のような繊細な花でした。軽やかな海風にゆられて、一瞬見えたと思ったらあっという間に消えて…再び波の音と共にしなやかにすがたを現す…そんなイメージです。

天然のローズ香料も使用されているようですが、どこからともなく…私の好きな「ベチバー」という深い緑を想起させる香料のぬくもりも感じられ、しっかりと大地に根付きながらも海風と戯れる花の姿が浮かびます。

ブラウスを着る前のウエスト部分、膝と足元に軽くスプレーしたあと、もうすぐウエストラインに届きそうな髪先にも軽く一拭き。
白のブラウスに青のカーディガン、グレーのスカートという服装に、ささやかな春の海風をのせての外出となりました。忘れたころにふっと香るやさしさに励まされて、和やかな時間を過ごせたと思います。





2011年1月16日日曜日

バラ科の植物

そろそろ幸先よく春を告げる梅が開花します。すでに冷気の中にもふんわりと甘い香りが漂ってくるのでどこかで咲き始めたのだろう、と嬉しくなります。
梅の花の芳香は古来から日本人に愛されてきました。梅の香りを歌ったものも多いです。確かに一度感じたら忘れられない可憐な香りです。




さて、梅に始まり、桃、桜、杏(アプリコット)、リンゴ、イチゴ…そして私の日常食となっているアーモンドもすべて、バラ科の植物でした。眺めて美しい花、花や実の独特な芳香…すべて私が大好きな植物ばかりです。そもそもバラの香り自体が大好きなので嬉しくなってしまいます。

アーモンドといえばビタミンEの含有量の豊富さが特徴。ちょっとした栄養補給と細胞の老化防止(抗酸化)のための天然サプリメントとして私は常備しています。さらに、アロマトリートメントのために精油を希釈する植物油としてもスイートアーモンドオイルをよく用います。ほのかにアーモンドの優しい香りのするこのオイルにローズ・オットー精油を希釈すると、一段と柔らかな香り方になるのも、まさにバラ科同士ゆえかもしれません。

2011年1月15日土曜日

香りをプレイ

たとえばどんなに名曲であっても、その演奏がよくなければ音楽としての素晴らしさが伝わらないように、香りも、程よく「聞ける」香らせ方でプレイしないと伝わらないなと常々実感しています。

具体的にいうと例えば強さ。
ついつい感覚的に近いと思っているせいか音楽に例えてしまうのですが、好きな曲でも大音量で聞きたいときとほのかにBGMで聞きたいときがあるでしょう。さらに素晴らしい曲とわかっていても音量次第では邪魔になってしまう…香りは特に強弱によって全く感受のされ方が変わり、香料原液では強すぎてとても良い香りと思えなくても、かなり薄められていくと好感をもたれるようになることが多々あります。


清々しいベルガモットの香りを閉じこめた小箱。
香りの栞をつくるために美篶堂で入手した上質な紙片を入れておいた。ほのかな香りがフェイドアウトしていく流れがよい。2日目の夜、小箱を開けると、かつて感動して味わった英国製アールグレイを思い起こす。


上記は昨秋ツイッターで私がつぶやいた内容です。ベルガモット精油原液を紙片に直接滴下した状態では強すぎて、という方もいらっしゃるので、原液を染み込ませたコットンから揮発する香りをその上に並べた紙片に移らせるようにしたものでした。この方法は昨春薔薇の香りをジャズピアニストに音楽表現頂いたコンサートでも行い、ほのかな香りのカードに一般の(香りを専門とする職業ではない)方にも心地よく感受されたようでした。非常に好評をいただき、このカードの作り方を何人もの方から問われましたので、連載中のパレチカWeb上のブログ「カードに薔薇の香りを」で詳しく方法を記しました。

かつて日本の平安時代の貴族社会において、すれ違うときにフワリと雅びな香りが立つ「追い風」が用意されたように、いかにさりげなく優雅に香りを演出(プレイ)するか。これからも考えていきたいと思います。

2011年1月13日木曜日

Higher (Dior)

先日香水マニアの方からの電話を受けてしまい、「メンズフレグランスのおすすめは…」などという質問をされてしまいました。一度でも会っていれば何らかのアドヴァイスをとは思いますが、面識のない方には安易にフレグランス名だけをあれこれ挙げることに抵抗があり、ご自身で調べてお探し頂ける方法をやんわりとお伝えしてしまいました。

その後、私にとってのメンズフレグランスは…と改めて考えていたら思い起こしたのが、"Higher"という名前のDiorの香り。他人から頂いたのでもなく確かに私自身が某百貨店で購入したのです。プレゼントではなく、自分自身のために。







爽やかなシトラスとウッディの流れに柔らかく絡んでくるのがローズマリーやサイプレスのアロマティックなハーブ。とにかくその名のとおり、天高くひたすら上を見上げたくなるような気分にさせてくれるのが魅力でした。私自身も時々足元にまとっていたものです。

何と発売年は今から10年前。2001年でした。調べてみたらいまも販売されているようです。そうそう、翌年2002年に開いた香水鑑賞会で、最新香水が並ぶ中「前年のものですが…」と、この"Higher"をご紹介したところ早速お気に召して直後に購入された女性がいらっしゃいました。

さてその後、私とリアルに面識のある知人男性が、最近の香水にいまひとつピンとくるものがないというので相談にのりました。最近ガラリと仕事の方向性をチェンジしてリベンジするのだと意欲に溢れたご様子。そこで高くたかく上を見上げるイメージの"Higher"の情報を伝えたところ、早速使ってみて良かったとのことで嬉しいご報告。知人の男性にこう言われたのだとか。

「いい香りですね~何ていう香りですか」

さすがに10年前の香りだけあってそう多くの人は着こなしていないようです…が時を隔てて逆にフレッシュな印象を生むのもファッションならでは、フレグランスならではの魅力かもしれません。"Higher"に限らず、時をわざとずらした使い方で新鮮な魅力を感じられるのも香りならでは。香りのコンセプトによっては、時とともに成長した人の変化を物語るかのように、使う時代ごとに新しさを感じることもあるということでしょう。

2011年1月12日水曜日

アロマセラピスト

アロマセラピスト。香りを用いてリラクセーション・癒し・心地よい時間を提供する人。このような職能者にふさわしい服装とはどのようなものでしょうか。
これまでの私のアロマセラピスト活動をふりかえりながら感じてきたことを挙げてみたいと思います。

まず、髪型や服装、立ち居振る舞いを含めた全体像がエレガントであること。これが第一条件です。「香り」という目に見えない感覚から個人はさまざまなことを想像するものですが、お客様には肯定的な印象、「素敵」「心地良い」「優美」といったイメージを想起していただきたいからです。

"élégant"(フランス語・形容詞)を、辞書で調べると次のように記されています。
1,優雅な、優美な、上品な、洗練された、粋な。2,手際の良い、気の利いた、(野暮ったい、すっきりしない、の逆)

上記1、2に共通しているのは、肯定的印象であること。形容詞的キーワードとしては「優しさ」「美しさ」があり、こう感じさせるものであることはどうやら必須であるようです。さらに「洗練」や「手際のよい」「気の利いた」という言葉から私が解釈したのは、よく熟考され、試行錯誤の上に磨かれて残った作法、無駄がなく違和感を感じさせない、といった状態です。

たとえば初めてお迎えするお客様とその日の状態・香りのお好みをうかがうコンサルテーションからアロマトリートメント施術、お見送りまでを行うアロマセラピストの場合。エントランスで初めて見られるのは顔を含めた上半身。清潔感と信頼感のもてる笑顔というベースの上にさり気なく

「私は…なんだか素敵な特別なところに来た」

と感じさせるファッション要素があってほしい。例えば、トップスとして着ているものが艶のある光沢、もしくは優美なシルエットを一見で感じさせる、健康的な皮膚が程よく見えるデザインのものであってほしいと思います。
そしてトリートメントルームへのご案内で全身を見られます。第一印象で視覚がとらえた上半身に違和感なく似合うボトムスが歩き方とともに優雅に見えたら理想。この全身から既知の他の職業や場所を想像させないように。全身真っ白では医療従事者…シルエットによっては保育士や介護士…エプロンの使い方によっては飲食店従業員…。インテリアの色調になじむことも大切ですが、このような現実的な想像を導かないようなエレガンスを目指したいものです。

アロマトリートメント施術がしやすい、という機能面ももちろん大切ですが、お客様は視覚も含めて五感トータルで心地良さを求められます。ラフになりすぎてはせっかくの芳香も優雅に感受されません。香りの感受とともに、トリートメントを受けるならば施術者の優しい手によるタッチで心地よくなることにも浸っていただく、まさに非日常的な時間と空間。「私はいま、特別な場所にいる」そう思っていただけるファッションを目指したいものです。










2011年1月11日火曜日

スイートスプリング

名前に魅かれて入手。熊本県産。名前の通り、爽やかなくだものです。




スイートスプリングは、「ハッサク」と「ミカン」の交雑種。山吹色の中に青緑がふわっと被るようなカラーリングの果皮をすこしそいでみると…ああ、たしかに「ハッサク」のやわらかな清々しさを想起させる香り。甘夏の一歩手前、といったデリケートな春の香りとの出会いです。

果皮は手でむかず、ナイフで櫛形にカットします。みずみずしい果肉を口にふくんでみると、温州みかんをマイルドにしたような優しい甘さ。果肉は柔らかくでジューシーで、この口当たりはハッサクとは違いますね。

気持ちの良い甘さ、というのでしょうか。酸味と穏やかな香りとのバランスが良く、そよ風のように程よい速度で通り抜けていくような爽快感。

数年前には、屋久島のたんかんに出会ってその濃厚なオレンジ色の果皮と甘味に感動しましたが、スイートスプリングからはその名前とともにひと足はやい春を感じられて、嬉しい限りです。


2011年1月9日日曜日

チョコレートの甘い香り

チョコレート好きの私にとって、これから約1ヶ月という期間、日本では華やかなチョコギフトの広告からあれこれ想像するのが楽しみです。

魅力はなんと言ってもカカオの香り。甘い香り、という表現もありますが、あの独特のほろ苦さが実際の味覚上の甘さをひきたてていると思います。

チョコレートの甘い香り展」。そんなタイムリーな展覧会が、静岡県の磐田市香りの博物館で現在(~4/3まで)開催中です。

…チョコレートの歴史は紀元前にさかのぼり、古代メキシコでは原料カカオが「神様の食べ物」と言われ、古くから不老長寿の薬として使われていた…展覧会内容の冒頭にこんなふうに記されていますが…この媚薬のような魅力、すでに大昔から人は気付いていたということですね。

日本ではチョコレートギフトといえば2月のバレンタインデーが有名ですが、私には3月~春先という印象があります。ちょうどパリにステイしていた時期が3月で、復活祭(Pâques)向けの卵形や動物形のチョコレートがショーウィンドウを飾っていたのを毎日眺めていました。お店からこぼれてくる甘い香りの誘惑から、眺めるだけではガマンできず、ある日友人とお店へ。そこで頂いた温かいショコラの美味しさが今も忘れられないのです。



2011年1月8日土曜日

香千載…

1月5日のブログ「名香」でもご紹介しましたが、香道の発展にともなう歴史的背景の概略がわかりやすくまとめられた本をご紹介します。


「香が語る日本文化史 香千載」
監修 畑 正高(香老舗 松栄堂)
写真 宮野 正喜 文 石橋 郁子
発行 光村推古書院株式会社
平成13年4月25日初版一版発行



とにかく目に鮮やかな写真満載です。私は、国際香りと文化の会の催事で香道具の展示を見たときにその魅力に引き込まれてこの本を購入したのですが、香席体験のときに心得を事前に知っておくのにも役立ちました。

「香」という切り口で日本の歴史を見つめ直すとこんなにもおもしろいものかと改めて感じます。小学校で初めて歴史を学ぶときあたりに香席体験があったらよいのにとさえ思う位です。

繊細な香のかおりに心を澄ませて聞く、聞香(もんこう)を実際に香席で体験すると、嗅覚だけでなく、聴覚も、ほかの感覚もクリアに研ぎ澄まされてくるのです。精神を集中させて自分の感じ方と向き合うため、自ずと他人への心遣いに意識が向くようになります。現代に生きる、より多くの日本の人に体験してもらいたいことのひとつです。

2011年1月6日木曜日

クラリセージ

今日は、植物に詳しく私に優しかった亡き祖父の誕生日でした。一緒に散歩していても見るだけで様々な花や草の名前を語り、庭に生えた草の効能まで知っていました。私は祖父ほど詳しくありませんが、感謝の気持ちで一生忘れられない植物を、その香りから出会ったときのことを記しておきたいと思います。

アロマテラピーを学び始めてまもなく、聞いたこともない植物の名前を挙げながら先生がくださった試香試をそっと嗅いでみたところ、ゆるやかな衝撃を受けました。

「こんな香りはじめて…秘密の花園に迷い込んだようなうっとり感…あたたかく包まれるようなこの懐かしさはなに?」

深く吸い込みたいくらいに心地良く感じたので、迷わず直後に買い求めました。私が初めて購入した精油、その由来植物はクラリセージです。

この植物が伝統的にどのような効能を伝えられてきたのかも詳しく調べないうちに、気に入った香水ならきっと自分と相性が良いはずとばかり、お風呂にいれたり、ティシュに滴下して芳香浴を楽しんでいました。すると毎月悩まされていた月経時の辛さが和らいだのです。期待していなかっただけに驚き、このことをきっかけに私は本気でアロマテラピーを学ぼうと決意したといっても過言ではありません。

私の感覚のみで選んだ香りが実はその時の私の身体を癒すものだった、そう感じて、生き物として自分も植物とつながっているようなあたたかさを感じました。クラリセージなんて植物は見たこともきいたこともなかったし、当時急遽入手した洋書、ハーバリストJeanne Rose 氏の著書 "375 Essential Oils And Hydrosols "にも、クラリセージは "Native to Europe"とあります。知識が感覚で磨かれるとはこういうことかと思います。

忙しさの中でも自分が落ち着ける、そんなブレンドベースを精油で作ることを試みて6年目、あらゆる環境で試してついに出来たと思えたのが一昨年の夏です。このベースにローズオットーとクラリセージをブレンドしました。「あなたは女性。いつも女性でいていいのです。あなたのペースでね。」と囁いてくれます。時々お守りのような香りとして愛用しています。




2011年1月5日水曜日

名香

香水は香りの芸術作品、と私は常々思っています。機能をもつものとしてみれば、それは衣服のように身につけるファッションアイテムとしてとらえることもできますが、アートとしてとらえたとき、純粋にその香りを嗅覚から脳への回路を通し「鑑賞」してみるのも楽しいでしょう。まだ自分が生まれていない頃に発売された香水などの場合、香りが調香された時代のイメージが脳裏に浮かんだりして面白いものです。まさにイマジネーションで旅するかのように。

日本人は「香りを聞く」香道という香りの芸道を発展させてきました。6世紀仏教伝来とともに入った香木の文化は、平安時代に貴族の教養としての「薫物」へと発展し、武家社会になると禅宗の影響より一本の沈香を嗜むことから微妙な味わいの違いを愉しみその異同を当てるという「組香」として遊戯化、こうした香の文化が江戸時代に完成され、明治時代に剣道や茶道とともに芸道として残すべきものとして大成されたそうです。…以上は、京都松栄堂12代当主である畑 正高氏監修による、カラー写真満載の「香が語る日本文化史 香千載」(光村推古書院株式会社)を参照しました。

香水評論家の平田幸子氏の著書に「香水ブランド物語」があり、その巻末に「モードの歴史」年表があるので、ちょっとそれを見ながら古いものを幾つかご紹介してみましょう。とりあえず1900年以降のものを。

1919 ミツコ(ゲラン)
1921 シャネルNo.5(シャネル)
1930 ジョイ(ジャン・パトゥ)
1932 ジュ・ルヴィアン(ウォルト)
1933 フルール・ド・ロカイユ(キャロン)
1948 レール・デュタン(ニナ・リッチ)
1959 カボシャール(グレ)
1966 オー・ソヴァージュ(ディオール)

…名香を挙げ始めたらキリがありませんが、エルメス専属調香師のジャン=クロード・エレナ氏は著書の中で、「オー・ソヴァージュ」は男女共用の香水として発売40年経った今でも変わらぬ人気と評しています。

どんな香りが自分に似合うのか、決めるまでに時間の余裕がある人には、こうした名香を試香紙につけてゆっくりとその「香りを聞く」時間を設け、自分なりにイメージを膨らませてみるのも面白いでしょう。その上で最近発売された香水からのイメージを比較すると色々な発見があるはずです。




2011年1月4日火曜日

プランナー

職業名を一言でわかりやすく表現することが難しい時代になってきたとつくづく思います。ある人がどんな仕事をしているのかを理解するとき、単に職業名という名詞からではなく、プロフィールの文章全体を読んでようやくイメージできることも多いからです。

私自身は現在、究極の一言で自分の職業を表現するとしたら「プランナー」という名称を選択したいところです。しかしながらこの名称だけでは抽象的すぎて何のジャンルで具体的に何をしているのか、イメージしてもらうことは困難です。

そこで、他人になるべくイメージしてもらえるようにするために、まず私が関わっている仕事のジャンルが「香り」であることを示すために「アロマセラピスト」という呼称を先に記しました。これは実際に某社団法人の協会認定資格を取得したことをきっかけに使用するようになったものです。

しかしこれだけでは、「香り」といってもアロマテラピーの分野に限定され、アロマテラピートリートメントの施術を専門に提供、という狭義の意味でのみ捉えられがちでした。そこで、大学講義(ファッションを専門に学ぶ学生対象に現代の香り文化を紹介、香り体感を通じて視覚表現力を磨く目的)を担当する講師であることも名刺に列記しました。

この名刺を様々な方にお渡しして頂いた質問と私の回答を列記してみます。

「ファッションも専門に学ばれたのですか?…大学で専攻したのはフランス語ですが、その後デザインコンサルティング会社でプランナーの1人としてアパレル企業のクライアントを担当したことがあります。その後フレグランスの勉強をしながらファッション誌の編集者も経験した時期がありました。」

「仕事のメインはアロマセラピストとしての施術で講師はサブですか?…どちらがメインという位置づけはしていないです。香りによって喜ばれる価値をいくつかの手段で伝え企画提案、提供しているにすぎません。」

確かにアロマトリートメントという施術サービスを頻繁に提供していた時期もありましたが、意欲ある後輩に指導させて頂き各々が立派に成長しているので、もはや私は「施術」という方法に固執していません。「香りという手段で様々な問題解決に取り組むプロ」として職業名「アロマセラピスト」を、もう一つの呼称「プランナー」を添えて名乗ろうと考えました。

ここで私が意味する「アロマ」は人にとってポジティブな意味をもつ、広義の「香り」を示します。私の周囲には、香りと一口に言っても様々な優れた専門家がいます。香水評論家の先生やキャリアを重ねた調香師の方々、販売に携わる方々等。このような方たちの功績をきちんと伝え活かすことも重要と常に考えています。

プランニング(企画)。それはあえて個別に名称を設けるに値する重要な仕事です。私が蓄積してきた知識や経験、スキルの活用だけでなく、様々なクライアントの状況から何が問題なのかを探り、より良い状態に導くための具体的な提案を行うために欠かせないものです。実際私はこれまで、いくつかの企業のプロジェクト監修コンサルティングを請け負ってもいますが、この仕事はまさにプランナーとして取り組むものと考えています。

思えば高校時代、私は理数科という科に所属していました。数学が最も好きな科目だったという単純な理由で選んだのですが、大学も高校で学んだ世界史に触発されて外国語学部を選びました。分類上それは文系だったわけですから高校~大学でかなり異質な仲間に揉まれました。様々なタイプの人物に私は幾度も自分の考え方を否定されたり拒絶されたりある時は共感されたりしたものです。現在の職業観をかえりみるに、学問を自由に追求する時期というのは極めて重要だったと思います。




2011年1月1日土曜日

AUTHENTの幸福感

2011年1月1日。新春のお慶びを申し上げます。毎月恒例「ついたちのフレグランス紹介」を、今回は香りの専門誌"PARFUM"156号と日本メナード化粧品株式会社のWebページを参考に記します。

2010年12月21日に日本メナード化粧品株式会社から発売されたばかりのフレグランスは、"AUTHENT EAU DE PARFUM" (オーセント オーデパルファム)。2008年、メナード創業50周年の前年に、肌の起源に働きかける種子の研究から誕生したオーセントクリーム(スキンケア商品)には、美しさのために香りがもたらす幸福感も重視されており、今回はその香りがクローズアップされた商品が生まれたということになります。

私はオーセントクリームを試させていただいたとき、まずそのふわりと拡がった優雅な香りにうっとりとしたことをよく憶えています。女性にとって「うっとり」できる時間があることは必須。「うっとり」とはまさに美を感じる幸福な瞬間なのです。デリケートな皮膚に働きかけるスキンケアにこそ、こうした香りはやはり大切と改めて実感したのでした。

2009年のお正月に、女優岩下志麻さん出演、背景に日本画家田渕俊夫氏の襖絵という印象的なテレビCMを見た私は、知人であるメナード広報の方にその襖絵のことを確認しました。やはり京都の智積院の襖絵でした。今もわすれられません。そのCM映像の最後にオーセントクリームのパッケージが映ったのです。視覚的な印象とともに余韻として残っていた香りがフレグランスになったことを嬉しく思います。

2011年、幸福感に包まれる時を過ごせますように。